電車の中でお菓子をねだる。お店のものを勝手に触る。よその家で寝転がる。近所の人に会ってもあいさつをしない。何かもらってもお礼が言えない……。わが子がこうした態度を取ったとき、人目も気になってつい声を荒らげて叱ってしまうという人もいるのではないでしょうか。けれど親世代もマナーを学んだことがある人は少ないかもしれません。幼児に行儀良く振る舞うことを教えるにはどうしたらいいのでしょうか。キッズマナーの専門家で、幼児教室の講師でもある東(ひがし)節子さんに、幼児期に教えるべきマナーと伝え方を聞きました。

【年齢別記事 保育園のママ・パパ向け】
(1) 「さしすせそ」が言えない子、練習開始はいつから?
(2) 乳幼児期の言葉の先取り学習は意味がない
(3) マナーは教えないと身に付かない 幼児期に大切な5つ柱 ←今回はココ
(4) 「あと5分!」では急がない幼児 ピンとくる伝え方は?

子は大人から学ぶ。「電車で食べる」を普通に思ってしまう恐れも

 「お行儀がいいお子さんですね」。親はこんなことを人から言われるとうれしいですね。「行儀良くしなさい」、「それは行儀が悪いよ」と子どもに言うこともあります。では、行儀がいいとはどういうことでしょうか。東さんは「行儀とは、礼儀の面から見た立ち居振る舞いのこと、あるべき正しい姿という意味合いがあります。『行儀がいい』とは社会の中で人に不愉快な思いをさせず、守るべき礼儀やルールを守っているということです」と説明します。

 「マナー」という言葉を行儀と同じように使うこともあります。「マナーは『相手のことを思いやり、それを行動に表すこと』が基本です。大人がマナーを教えることで、子どもは行儀良く振る舞えるようになります。今『教える』と言いましたが、マナーや行儀は後天的に身に付ける能力です。子どもは本能的な欲求に基づく行動は教えなくてもできます。食べる、排せつする、遊びたいからおもちゃを出すといったことです。一方、あいさつをする、片付ける、椅子に正しく座る、家と外の区別を付けるといったことは教えないとできません

 そこで気をつけたいのが、親の振る舞いだと東さん。「子どもは親のすることが正しいと思い、まねをします。行儀がいい、悪いの概念も、親の振る舞いや言ったことがそのまま子どもの判断基準になります。もしも親が電車の中でものを食べていたり、靴をそろえずに家に上がったりしていたら、子どもはそれが普通だと思うでしょう」

 「そんな人がいるの?」と思うかもしれませんが、東さんによると、歩きスマホをする、あいさつをしないなど基本的なマナーを守らない親は意外と多いのだそうです。「子どもは親が言うのを聞いて自然にあいさつ言葉を覚えます。親があいさつをしなければ子どもも『あいさつができない子』と判断されるようになる恐れがあります。それは子どもの将来にとって非常に不利なことです」

 それでは具体的にどのようなことを教えていけばよいのでしょうか。東さんは子どもに伝えるマナーには下記の5つの柱があると言います。また、マナーの伝え方にもポイントがあります。次ページから詳しく聞いていきます。

子どもに教えるマナー 5つの柱 ←P2で詳しく解説!

1 自分のことを自分でできるようにする(自立する)
2 あいさつする
3 家と外の区別を付ける
4 よその家に行くときに注意することを覚える
5 友達と仲良くする

マナーの伝え方 4つのポイント ←P3で詳しく解説!

・できないことを頭ごなしに叱らない
・子どもができていることを探して認め、自信を持たせる
・「なぜできないか」など子どもの言い分を話させ、安心させる
・なぜ、そのマナーが大切なのか説明をする