わが子には語彙力の豊かな子になってほしいと親は願うもの。そのためには、言語が未発達の乳幼児期に、子どもに対してどのように語りかけるのがよいのでしょう。また親子で会話をする際に心がけることとは? 言語聴覚士で、ことばの相談室ことりを主宰する寺田奈々さんに話を聞きました。

【年齢別記事 保育園のママ・パパ向け】
(1) 「さしすせそ」が言えない子、練習開始はいつから?
(2) 乳幼児期の言葉の先取り学習は意味がない ←今回はココ
(3) マナーは教えないと身に付かない 幼児期に大切な5つ柱
(4) 「あと5分!」では急がない幼児 ピンとくる伝え方は?

子どもの語彙を増やすには「ワンワン」と「犬」どっちがいい?

 子どもが小さいうちは自然と「ワンワン(犬)だね」「メンメン(ラーメン)食べようね」といった赤ちゃん言葉を使う人が少なくありません。けれども、赤ちゃん言葉は乳幼児期の一時期のみ使用する言葉。いずれ使わなくなる言葉であればあえて使わず、最初から「犬だね」「ラーメン食べようね」などと、大人と同じ言葉を使った方が、子どもの語彙を増やすためにはよいなどという話を聞いたことがありませんか。果たして子どもにとってはどちらが正解なのでしょう?

 子どもの言葉の発達に詳しい、言語聴覚士の寺田奈々さんは次のように話します。

 「難しい言葉を最初から使った方がよいか、それとも最初は簡単な赤ちゃん言葉を使った方がよいか、という議論は確かに存在しています。言語発達の観点からの結論から言うと、言葉の発達のためには、最初は子どもにとって簡単な赤ちゃん言葉を使ったほうがよいとされています。

 言葉の発達にはかなり細かい順序があることが分かっています。言葉の獲得のスピードには個人差がありますが、どんなに獲得スピードが速い子であれ、獲得の順序を跳び越えることはありません。なので、先取り学習方式であえて難しい言葉を獲得しようとしてもあまり意味はないのです」

 簡単な言葉から獲得し、言語の発達に沿って順にステップアップしていくというのがよいと寺田さん。そのステップアップとはどのようなものでしょう? さらに、子どもの語彙を増やすために、親子の会話の中で心がけるとよいことや、逆に親が避けるべきことなどについて、次のページから寺田さんに詳しく聞いていきます。