成長とともに激しさを増す戦いごっこ。「危ない!」とドキドキしながら見守る親の心配を尻目に、戦いごっこに夢中の子どもたちは、キックやパンチポーズを決めては楽しそうにしています。戦いごっことは子どもにとってどのような意味を持つ遊びなのでしょうか。またケガをさせないために親が見守るべきポイントとは? 40年以上にわたり子どもたちを見守ってきた保育施設代表の柴田愛子さんに話を聞きました。

【年齢別記事 保育園のママ・パパ向け】
(1) すぐ諦めるわが子 親の声かけや「考えのクセ」が影響?
(2) 泣きわめく子 自律性やメタ認知を育てる親の声かけは
(3) 戦いごっこが育む生きる軸 見守る際のポイントは? ←今回はココ
(4) 幼少期の習い事にはリスクも 親が知っておくべきは

子が戦いたいのも、親がやめさせたいのも共に本能

 幼児期の男の子を中心に夢中になる戦いごっこ。保育園や幼稚園の年中・年長ごろになると、一部の子の間では戦いごっこが遊びの中心になるのが例年の光景だそうですが、一方で園に迎えに行ったときに友達に馬乗りになっている姿を見ると親としてはドキッとしてしまうかもしれません。「ごっこ」とはいえケガにつながるリスクもあり、やめてほしいと思う気持ちも。こうした戦いごっこについて、親はケガを避けるために「やめなさい」と伝えて戦いごっこから遠ざけてもよいのでしょうか?

 これに対し、「ケガをさせたくないという親の気持ちも分かりますが、戦いごっこは子どもたちにとって大事な遊びの一つです。ぜひこの遊びの奥深さを理解してください」と話すのは、認可外保育施設、りんごの木子どもクラブ代表の柴田愛子さんです。

 「戦うというのは、人間の本能です。特に動物のオスのDNAには戦うことが組み込まれているようで、多くの男の子たちが戦いごっこを好みます。中にはこれをコミュニケーション手段の一つにして、気になる子にちょっかいを出し、『戦い』を挑むことから仲良くなるという子もいます。

 一方で、『危険だからやめさせたい』と思う親の気持ちも当然ですよね。特に母親たちが、穏やかであってほしいと願うのは、これもまた動物のメスとしての本能です。実際、荒々しく危険に見える戦いごっこは、母親たちの目には好まざる遊びと映り『やめなさい』とストップをかけられることは多く、専業主婦による子育てが一般化した1970年代から戦いごっこ(ちゃんばらごっこ)は減少したともいわれています」

 時代はめぐり、今また働く母親が増え、保育園で育つ子が増える中で、子どもたちは本能のままに戦いごっこを楽しむようになっています。そんな中、「戦いごっこは生きる軸をもつくり出していく大事な遊び」だと柴田さんは言います。

 次のページから、戦いごっこの持つ意味や遊びを通じて育まれる力、ケガにつながらないよう大人が介入すべきポイントやその際に注意すべきことなどについて、詳しく聞いていきます。