算数が得意な子と苦手な子、両者を分けているものは一体何なのでしょうか? 32歳で学習塾を起業して20年間経営し、約7000人の乳幼児から小学生の教育に携わってきた立石美津子さんは、その原点となる物は「家庭での“先行体験”の有無」だと話します。

 特に、最近は「脱ゆとり教育」の影響により、これまで多くの児童がつまずいてきた単元を、小1や小2で学ばなければならないケースも増えてきています。つまり、「算数嫌い」はより低年齢化する可能性があるのです。

 立石さんの言う、未就学時からできる“数の先行体験”とはどのようなものなのでしょうか? 今回は、「“数字”と“時間”に強くなる、未就学時からやっておくべき事前学習」について詳しくお聞きしました。

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先行体験のない算数は、子どもだけではなく大人も苦手

 「突然ですが、『1000mLは何dLですか?』と聞かれたら、すぐに答えることができますか? 実は、このリットル(L)、デシリットル(dL)の勉強は、2年生で出てきますが、どの児童も共通して嫌がる単元なんです。大人でも答えられない人は多いんですね」(立石美津子さん)

 ちなみに、この問題の答えは「10dL」です。

 なぜこの単元で多くの子どもたちがつまずくのでしょうか? その理由について、立石さんはこう分析します。

 「日本中どこのスーパーに行っても、dLという単位を使って売られている商品はありません。つまり身近な体験として、子どもたちはこれらの単位を扱ったことがないために理解が追いつかないのです。実は、算数に欠かせないのはこうした“先行体験”です。未就学時に、どれだけ多くの“数の概念”を知る経験ができたかによって、小学校に上がってからの算数力は大きく変わってきます」

 立石さんの言う、“数の概念”を身につけるには、一体どうしたらいいのでしょうか?

立石美津子さん
立石美津子さん
<次のページからの内容>
● 4歳でも1から20までの「数の体験」は必要
● 積み上げ式の算数は、スタートラインの底上げが大事
● 家庭でできる、“数の概念”を教える事前学習
● 「時間の概念」は、生活の中で身に付ける
● 分かったふりをしない 「SOSを出せる子」に必要なもの