秋も深まり、冬の足音が聞こえてきました。小さい子どもを持つ親にとっては「インフルエンザ」や「ノロ」「ロタ」などの感染症が怖い季節の到来です。「ロタはワクチンの自費接種が始まってからは劇的に患者さんが減ったと実感します」と語るのは、小児科医として様々な病院で数多くの子どもを診察してきた伊藤淳先生。病気の子どもを連れて病院を訪れた親が“納得”して帰ることができるよう、「時間の許す限り、丁寧な診察と詳しい説明を心掛けています」と言う伊藤先生に、冬の感染症について解説してもらいました。第1回の「インフルエンザ」に続き、第2回は「ノロ」と「ロタ」による胃腸炎について教えてもらいます。

【年齢別特集 保育園のママ・パパ向け】
(1) インフルエンザは“風邪の王様” どう立ち向かう?
(2) ノロ・ロタ 嘔吐期を地道な水分補給で乗り切って ←今回はココ
(3) 年中クラスになったら「ひらがな」学習を意識して
(4) 未就学児 数字と時間の概念を生活の体験の中で学ぶ

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

ロタはワクチンの接種により、患者が激減している

小田原市立病院・小児科・医長の伊藤淳先生
小田原市立病院・小児科・医長の伊藤淳先生

 冬はノロウイルスやロタウイルスによる胃腸炎が流行する季節です。

 「急性胃腸炎の多くはウイルス感染によるものです。ノロウイルスとロタウイルスは感染力が強いため名前がよく知られていますが、それ以外にも胃腸炎症状を起こすウイルスは多数あります」

 「感染経路は様々ありますが、例えば、親がどこかでノロに感染してしまった。手洗いが不十分なまま家族の食事を作り、家族全員が感染してしまった。あるいは、保育園でロタに感染した園児が下痢をした。保育士が手袋をしてオムツを替え、消毒も手洗いもしたけれど、少しだけ不十分だったために手にウイルスが残ってしまった。その手で他の園児の食事の世話をしたために、感染が広がってしまった、などがあります」

 このように胃腸炎を起こすウイルスの感染ルートは、基本的には「経口感染」で、ウイルスの付着した手を口に持っていくことで体内に入ります。感染者や汚染物に触れることでウイルスが手に付着するため、接触感染とも言えます。

 症状は腹痛、嘔吐・下痢、そして発熱ですが、高熱にはなりにくく、40度がずっと続くというようなことはあまりありません。伊藤先生は、「ノロよりロタのほうが強い症状が出ることが多いです。ノロは流行時期が少し早く、12~1月ごろ急増します。ロタは冬の後半から春先に流行するイメージです」と言います。

 ロタには、ノロと違って、ワクチンがあります。「ロタのワクチンを打っていればロタに感染しない、ということではありませんが、症状はだいぶ軽くなります。ロタのワクチンが発売される前は毎年そのシーズンになると、小児病棟の大部屋がロタ患者さんで埋まったものです。しかしワクチンの発売から6~7年を経て、ロタで入院される患者さんは激減しました。ロタのワクチンは自費で行う任意接種であるにもかかわらず、接種したお子さんの割合が4割を超えたというデータがあります」

 「これを『まだ4割か』と捉えることもできますが、私は、4割以上の接種効果を感じています。“集団免疫”という考え方をご存じでしょうか。集団の中の一定数が免疫を付ければ、その集団で感染症が広まりにくくなるというものです。例えば、園児100人の保育園で40人がロタワクチンを接種していたら、その園では感染拡大をある程度抑えられ、接種していない残り6割の園児も恩恵にあずかれる。こうした効果があるのではないかと思われるほど、ロタ感染は以前より減少しており、ワクチンの効果に驚いています」

 「ちなみに、ロタのワクチンは接種可能な時期が決まっています。生後6週以降に接種可能で、また製品の種類によりますが1回目の接種を12週6日または14週6日までに済ませる必要があります」。これは、月齢が進んでからの接種で腸重積という病気を引き起こす可能性が高まるからです。腸重積とは、腸が腸の中に入り込み、腸閉塞の状態になる病気です。症状としては、間欠的腹痛(数分~十数分置きに痛みで激しく泣いたり泣きやんだりを繰り返す)が特徴的で、他に嘔吐、血便があります。腸重積になった場合、肛門からチューブを入れて空気や造影剤を送り、圧をかけて戻します。それでも戻らなければ手術が必要になります。

<次のページからの内容>
● 潜伏期間は1~2日。発症後は、嘔吐が1~2日続く
● ノロ・ロタは怖くない 実態は“お腹の風邪”
● ペットボトルのキャップ1杯分の水分を5分置きに
● 「水分・塩分・糖分」を効率的に補う食事とは?
● アルコール消毒は効かない
● 家に備えておきたい「吐しゃ物処理グッズ」