うまくいかないことがあると、泣きわめくこともまだまだ多い5~6歳の頃。そうなると親はげんなりして、冷静な反応ができなくなったり、思わず声を荒らげたりしてしまいがち。こんな状況で、子どもの「心を育てる」ためには、どういった反応や声かけを親は心がけたらいいのでしょうか。気持ちとうまく付き合っていく力、幼児期の発達課題である自律性の獲得、そして将来にわたって大切な「メタ認知」を育てることにもつながる工夫について、前編に続いて、日本ポジティブ教育協会代表理事の足立啓美さんに聞きました。

【年齢別記事 保育園のママ・パパ向け】
(1) すぐ諦めるわが子 親の声かけや「考えのクセ」が影響?
(2) 泣きわめく子 自律性やメタ認知を育てる親の声かけは ←今回はココ
(3) 戦いごっこが育む生きる軸 見守る際のポイントは?
(4) 幼少期の習い事にはリスクも 親が知っておくべきは

泣きわめかれると「よい対応」どころではなくなる

 色々なことに挑戦したい気持ちが大きく、自分の意見を主張するようになってくる5〜6歳ごろ。しかし、自分の考えや気持ちを言葉で言い表すことが難しく、うまくいかないことがあると、泣きわめいたり、イライラした態度を見せたりすることもまだまだ多いかもしれません。

 「5~6歳の子は自分でできることもどんどん増え、世界も広がっていきますが、感情をうまく扱う力はまだまだ発達途中です。うまくいかないことがあると、怒り出したり、泣きわめいたりすることもしばしばあるでしょう。また、自分と親の考えが違うことも意識し始める時期なので、自分の意見を主張して親に逆らうような態度が見られることもあります」と日本ポジティブ教育協会代表理事の足立啓美さん。足立さんは、さまざまな教育現場で講師として活動しており、5歳児を育てるママでもあります。

 そうなると、親は子どもの言動にげんなりしてしまい、冷静に「よい対応」を考えるのが難しくなってしまいます。「その気持ちはとてもよく分かります」と足立さん。しかし、「ちょっとした工夫で、このような大変な状況を子どもの心を育てるチャンスとすることは可能」と足立さん。そうした工夫をすることによって、自分で自分の心を立て直し、感情とうまく付き合う力を育み、自律性(自分で自分のことをする力)を育てていくことができるとも説明します。

 また、今教育現場において重要視されているメタ認知を育てることにもつながっていくと足立さんは言います。「メタ認知は、小学校高学年くらいから、学習の場面においても大事だといわれています。例えば、何か問題を解くときに、自分がどれくらいその課題を理解できていて、どれくらい解くことができて、この部分は自分ではできないから手助けしてもらう必要がある、といった客観的に自分の能力を見られるような力は、『学習上におけるメタ認知』とされ、注目されています。

 メタ認知が発揮されるのは小学校以上だといわれていますが、幼児期の頃から徐々に育っていくもの、という考え方が主流になっています」

 子どもが、泣きわめくなどネガティブな感情を持ったときに、どんなことを心がければ子どもの心が育つのでしょうか。自律性やメタ認知の育成にもつながる声かけの工夫を次のページから詳しく聞きました。

子どもが泣きわめいたとき 親が心がけたいポイント

(1)親自身が落ち着ける手法をいくつか決めておく
(2)感情に名前をつける「感情のラベリング」をする
(3)解決方法を一緒に考える