おっぱいを飲んで寝ているだけだった赤ちゃんが、食べることや話すこと、歩くことを覚えて、お友達と遊んだりするように――。0歳から3歳くらいにかけての子どもは、生きていくために必要なことをぐんぐん身に付けていく時期ですが、当然ながらそのスピードには個人差があります。

 保育園で同い年の子たちを目にしていると、「うちの子はまだ○○ができないけど、大丈夫かしら…」などと、どうしてもいろんなことが気になってしまうもの。そこで、乳幼児期の発達に関する親の不安や悩みについて、国立成育医療研究センターと遠隔健康医療相談サービス「小児科オンライン」に勤務している小児科医の山口有紗先生にお話を聞きました。

【年齢別特集 保育園のママ・パパ向け】
(1) 制約あるけど頑張りたい 時短ママはモヤモヤだらけ
(2) 時短でも納得感のある評価と意欲的に働ける環境とは
(3) 乳幼児期の発達 「できたこと」をすかさず褒めて ←今回はココ
(4) 集団生活でのわが子の成長、親はどう見守ればいい?

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

言葉の習得がゆっくりの子に対し、親ができるサポートは?

 山口先生は、周産期から乳幼児期、思春期、成人期までの医療を包括的に提供する病院で、乳幼児のメンタルヘルスに対応する部門に所属。日々、子どもたちの心と体を見守っています。成長や発達について家族が抱える多様な心配事のなかでも多いのが、「言葉の習得」や「偏食」についてだといいます。

 「身体の成長について、私たち小児科医は、母子手帳の後ろに載っている成長曲線というグラフを基に、その子の育ちを見ていきます。運動発達に関しては、首のすわりやお座りなど重要な時期がいくつかありますが、『1歳半で歩かなかったら相談を』というのは覚えておいていただけたらと思います。歩き始めても転びやすいとか、左右で動きに差がある場合は、神経の疾患や股関節脱臼などの可能性があるので注意したほうがいいでしょう。

 言葉については上にお兄ちゃん、お姉ちゃんがいる子はやっぱり出てくるのが早い傾向があるかもしれません。保育園に入るとそういう違いが見えるからか、周りとつい比べてしまって、実際は全然遅れていないのに『うちの子、全然言葉が出ていない』と心配になるご家族が多い印象があります。『どうしたら増えるかな』という悩みはよく聞きますね」

 言葉の発達の目安は、「早い子は1歳前から有意味語(意味のある単語)を話すといわれていて、小児科医としては1歳半くらいで5つの言葉が出てほしい」と山口先生。習得のペースがゆっくりだったり、あと少しがなかなか言えなかったりする場合、親はその先の言葉が出てくるようサポートしたいと思うもの。例えば目の前のリンゴを示して、「これはリンゴだよ、リ・ン・ゴ!」というように、一生懸命子どもに正しい言葉を言い聞かせる家族もいるそうですが、そんなとき山口先生は、「単語を教え込むよりも、子どもが今興味を持っていることについてナレーションをしてあげてほしい」とアドバイスしています。

<次のページからの内容>
● 子どもがやっていることを「実況中継」すると言葉が伸びる
● 「食べるって楽しい」の積み重ねが、食べるものの幅を広げる
● 最後まで待たず、行動を始めたところで「すかさず褒める」!
● 「癖は子どもなりのストレス対処法」と親が認識することが大事
● 「問題行動」と思う前に、その子の特性と環境の相性を観察