前回紹介した時短ママたちの声からも分かるように、まだまだ多くの職場では、時短で働くことには様々な「モヤモヤ」が生じやすいのが現状です。仕事の量ではなく「質」が変化したり、「頑張っても一般社員より評価が低くなってしまうのでは」「早く帰ることで周りに負担をかけているのでは」と感じてしまったりすることから、仕事への前向きな意欲を維持するのが難しくなる場合もあります。

 では、時間的な制約があっても、後ろめたさや評価に対する不安を感じることなく働けるために必要なこととは何でしょうか。先進的な取り組みを行っている大企業と中小企業の事例を紹介します。

【年齢別特集 保育園のママ・パパ向け】
(1) 制約あるけど頑張りたい 時短ママはモヤモヤだらけ
(2) 時短でも納得感のある評価と意欲的に働ける環境とは ←今回はココ
(3) 乳幼児期の発育 「できたこと」をすかさず褒めて
(4) 集団生活でのわが子の成長、親はどう見守ればいい?

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

フルタイムと同じ基準で評価することが、意欲低下につながっていた

 「時間的な制約に配慮しながら、役割レベルに見合った目標設定(仕事配分)を行い、配慮した度合いを『目標レベル』として設定して上長と部下の間で共有することによって、納得感のある目標を設定する」。このような評価手法を取り入れているのは、大日本印刷です。同社では現在、306人が短時間勤務制度を利用しています。

 例えば、能力や単位時間当たりのアウトプット量が同等なフルタイム社員と時短社員がいたときに、二人に同じ成果目標を設定した場合、時間の制約があるぶん達成度には差が出ることが多いでしょう。「短時間勤務であるがゆえに、総合的なアウトプット量や貢献度が低い」などの理由で評価が低くなると、意欲の低下につながりがちです。同社においても以前はそうした状況がありました。

 「当社の人事制度において、半期ごとに設定する目標は、夏・冬の賞与人事考課のベースとなります。そして賞与人事考課は、年間の給与を決定する賃金改定人事考課や、役割等級の昇級・降級にも影響します。また、人事考課は従前までは、フルタイム社員と短時間勤務者が同じ基準で評価されていたため、相対的に短時間勤務者の考課が低くなる傾向がありました。それが賃金面や短時間勤務終了後のキャリアに影響し、本人のモチベーション低下にもつながっていたのです」(同社労務部、以下同様)

 そこで同社では、2010年から、「目標レベル」設定を導入しました。これはどういったものなのでしょうか。

<次のページからの内容>
● フルタイム社員との比較ではなく、自身の目標レベルに対する達成度で評価
● 「自分の業務を共有できる人」を配置し、当事者と職場をフォロー
● ママ社員に肩身の狭い思いをさせたくないから、残業なしがルール
● 目標を数値化することで、「何をすべきか」が明確に
● 時短社員も一般社員も役割を全うし、働き続けてほしい