「ママにはどうしておちんちんがないの?」「赤ちゃんはどこから生まれてくるの?」――。好奇心旺盛な子どもは、大人が一瞬たじろいでしまうような、性の疑問をある日突然ぶつけてきます。「子どもが性器をいじっているのが気になる」などの具体的な悩みを持つママ・パパも多いかもしれません。そんなとき、親はどうしたらいいのでしょうか。NPO法人ぷれいす東京理事で日本性教育協会運営委員会副委員長も務める池上千寿子さんに2回に分けてお話を伺います。

【年齢別特集 保育園のママ・パパ向け】
(1) 熱中症予防 脱水のサインとエアコンの上手な使い方
(2) プール入れない? 夏に注意したい感染症、夏風邪は
(3) 幼児の性の悩み 「タブー視」がもたらす悪い影響 ←今回はココ
(4) 性器いじり、質問への答え方…人に聞けない性の悩み

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

保育園児でも性に関する疑問を持つ子ども多し!

 「僕にはおちんちんあるのに、ママにはどうしてないの?」。皿洗いをしていたら突然、性に関する疑問をぶつけられ、「ちょっと今忙しいから」などと思わずはぐらかしてしまった。そんな経験のあるママ・パパは多いかもしれません。そして、後から「あの対応でよかったのかしら」と思い悩んでいる人もいるのではないでしょうか

 以前、日経DUALが行ったアンケートによると、「子どもから性に関する質問をされたことがある」と答えた人は60.0%。「ない」と答えた人は、37.9%でした。子どもの年齢別でみると、年長と年中の子どもを持つ親の層でも「ある」と答えた人は7割を超えており、幼児期の子どもたちも性に関する疑問や関心を強く持っていることが分かります。でも、まだ幼い子どもの疑問にどこまで答えるべきか、親としては判断が難しいところです。

 「この年齢のころの親の対応は、その後の人生のためにも、本当に大切です」とNPO法人ぷれいす東京理事の池上千寿子さんは言います。「『なんでパパにはおちんちんがあって、ママにはないの?』などの子どもの質問は『なぜ空は青いの?』というのと同じ、素朴なもの。子どもは、すべてのものに関してただ好奇心旺盛なだけで、子どもにとって、性に関する質問と、そうでない質問との境目はありません」

 この時期に何より大切なことは「性をタブー視する環境をつくらないこと」と池上さん。「そのためには、もし質問が来たら、まず受け入れることを考えてください。反射的に『いやらしい』『それは言っちゃダメなの』などの否定的な反応をすると、性に対してマイナスな価値観を植え付ける『逆性教育』になりかねません。はぐらかしたり、無視したりするのもよくないです。無視を繰り返すと、『この話題はしちゃダメなんだ』という強烈な暗黙のメッセージを親が発することになってしまいます」

 では、親はなぜ、否定的な反応をしたり、はぐらかしたりしてしまうのでしょうか。

写真はイメージです
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<次のページからの内容>
● 性についての考え方は、親の代から受け継がれる
● 「正しい知識」を投入する必要はある?
● 一点だけ気を付けてほしいこと
● 必ず加えてほしい大事なセリフ