子どもがたどたどしい手つきで一生懸命にお手伝いに取り組む姿はとてもかわいいですね。時間に余裕があればどんどんやらせてあげたくなりますが、毎日忙しいと「大人がやったほうが効率がいいから手を出さないでほしい」という気持ちになります。それは子どものやる気の芽を摘むことになるのでしょうか。そこで、チャイルド・ファミリーコンサルタントの山本直美さんに、初めてのお手伝いで、親はどのように関わればよいのかを教えてもらいました。

【年齢別特集 保育園のママ・パパ向け】
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(2) 添い寝卒業には子どもの動機と自分への信頼が必要
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 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

お手伝いは子どもの“社会化”が始まる3歳ごろから

 「子どもが3歳になったらお手伝いを始めましょう」。こう話すのは、幼児教育を通して6000人以上の子どもと接してきた山本直美さんです。山本さんによると、3歳というのは、社会性が発達して、人との関わりが広がり、深くなる時期なのだそう。社会の一番小さな単位である家族の一員として「お手伝い」という役割を持つことで、子どもの社会化が進むといいます。社会化が進むことにより、ごっこ遊びで友達とやり取りをして遊べるようになるなど、家族以外の人とのつながりを作れるようになります。

子どもが自分でやると決める“動機付け”が大切

 それでは子どもがやりたがるままに、何となくお手伝いをさせ始めてよいのでしょうか。山本さんは「それでは、やったり、やらなかったりになってしまい、お手伝いにはなりません。お手伝いを始めるときには、何をしてもらうか十二分に子どもと話し合って、子どもに決めさせることが大切です」と話します。

 山本さんは子どもに決めさせることを「動機を付ける」と言います。

 「まずは、なぜお手伝いをするといいのか。家族はどう思うのかということを子どもと話してみてください。『新聞を運んできてくれたらママはうれしいな』『朝、パパを起こしてくれたら助かるな』『〇〇ちゃんはありがとうと言われたらうれしいよね』と話しながら、子どもにやれることは何だろうと一緒に考えてみましょう」

 「このステップを丁寧に行うことがお手伝い成功のカギです。親はお手伝いの内容を提案してもよいですが、『これをやって』と押し付けるのではなく、最終的には子どもに決めさせましょう。『私は朝と夕方靴を並べる』というように、子どもに宣言させて、守らせるようにしましょう。子どもは自分で考えて決めたことは、守ろうとするものです

お手伝いをやることで自分に自信を持てるようになる

 大人が仕事をするときもそうですが、やったことに対してレスポンスがないと、やったかいがなくなり、次も同じくらいのエネルギーは注ぎにくくなります。山本さんによると子どもも同じなのだそう。「靴並べにしても配膳にしても、お手伝いは家事の一環なので、親はやってもらって当然と思ってしまいがちです。でも、子どものお手伝いでは違います。子どもが約束通りきちんと靴を並べられたら、『ありがとう、〇〇ちゃんのおかげで玄関がきれいになっていて気持ちがいいな』とその行いを認めてあげてください」

 この「認める=承認」が子どもの成長のきっかけになります。「アメリカの心理学者マズローが唱えた『欲求5段階説』の中に『承認への欲求』があるように、人には認められたいという欲求があります。子どもも同じです。人の役に立つことの喜び、ありがとうと言われてうれしかった感覚を幼児期に持つことは、とても大切です。存在そのものを受け入れてもらったことから自信が付き、自己肯定感の向上につながるのです」

 山本さんによると、自分は認めてもらっていると感じている子どもは情緒的エネルギーが高いといいます。「情緒的エネルギーとは、頑張ろう、挑戦しよう、できるまで考えてみようという力です。学力のように目に見える力ではありませんが、子どもが伸びていくときにとても大切になります」

<次のページからの内容>
● 初めてのお手伝いは日常の延長から
● 初めてのお手伝い おすすめリスト
● うまくいかなくても存在否定はしない 1日の終わりに対話の時間を持とう
● 子どものタイプ別お手伝いの決め方
● 最初はノリノリなのにすぐに飽きてしまう子
● 粘り強いがぶきっちょな子
● できないとすぐに諦めてしまう子
● お手伝いの注意点