忙しい共働き家庭にとって「三種の神器」にも等しい便利アイテムが、子ども乗せ自転車。子どもと共に目的地まで「ひとっ飛び」できる頼もしい子育ての相棒。でも、この便利な自転車に頼るあまり、ふと立ち止まってみると、いつも移動は自転車で、子どもが外を歩く機会がほぼなかったということも。それによる健康上や発達上の問題はないのでしょうか。中京大学スポーツ科学部教授の中野貴博さんに話を聞きました。

【年齢別記事 保育園のママ・パパ向け】
(1) 「同性の子と遊ばない」気になる親が大事にすべきは?
(2) 朝の徒歩登園が、生活習慣やその後の学力にも好影響 ←今回はココ
(3) 和式で古い? 小学校トイレへの不安感をなくすには
(4) けっこう傷つく「ママのせい」発言 どうすれば?

今の子どもの体力は80年代から大幅に低下

 子どもに朝食を食べさせ、支度を済ませたら自転車に乗せて園に向けて猛ダッシュ……。園に着きホッと一息つきながら、わが子を見るとまだ眠そう……。そんな朝の光景に心当たりのある人も少なくないのでは。

 子どもの体力や運動能力の向上に詳しい中野貴博さんによると、こうした朝の光景の中の「自転車に乗せて猛ダッシュ」の部分を「親子で歩いて園に向かう」に変えるだけで、子どもの成育が大きく変わっていくのだそう。

 「朝や夕方の送迎時間は一日で一番忙しい時間帯ですよね。だから自転車や車で子どもを送迎したい気持ちはよく分かります。でも、園で友だちとハツラツと遊び、健康的な生活習慣を獲得するためには、送迎時に歩くことが圧倒的に有利なのです」

 「3歳以上の幼児には1日に最低でも1万3000歩は歩いてほしい」と中野さん。

 「文部科学省(2016年からはスポーツ庁)が毎年実施してきた『全国体力・運動能力、運動習慣等調査』によると、1980年代をピークに子どもの運動能力は低下していて、特に、走能力、投能力では低下が顕著であることが指摘されています。調査自体は小・中学生を対象に実施されていますが、幼児の体力についても同様の傾向があると考えています」