小学校へ入学する際、「ひらがなの読み書きくらいできたほうがいいの?」「きちんと座って先生の話を聞けないと」など、「あれもこれもできるようになっておかなきゃ」と心配になるママ・パパも多いのではないでしょうか。専門家に聞くと、2020年度からスタートする小学校の新しい学習指導要領の内容を受けて、家庭での就学前準備の心構えも変わってきそうです。では、親は就学を控えた子どもに具体的にどんなことをしてあげるといいのでしょうか。乳幼児教育学の専門家である玉川大学教育学部教授の大豆生田啓友さんと、横浜市立池上小学校で実際に子どもたちを教えている校長の寳來生志子さんに聞きました。

【年齢別特集 保育園のママ・パパ向け】
(1) 子どもの食物アレルギー新潮流「皮膚のケアが重要」
(2) 食物アレルギー疑問解消 予防できる?加熱効果は?
(3) 離乳食は遅い方がいい?食物アレルギー今どきの常識
(4) 就学前には子どもの興味・自己肯定感を育てよう ←今回はココ
(5) 入学直後の授業スタートカリキュラムはどんなもの?

4月からの新学習指導要領で、就学前準備の「前提」も変わる

 4月の就学を目前に控え、「子どもと一緒にどんな準備をしておいたらいいだろう」と不安に感じるママ・パパも多いのではないでしょうか。日経DUALが2018年に実施した読者アンケートで、「小学校入学直前の3~4月に、入学後を見据えて『取り組んでおいてよかったこと』、または『取り組んでおくべきだったと後悔したこと』がありますか」と聞いたところ、45.6%が「ある」、25.6%が「ない」と回答。具体的には、以下のように「勉強に関する準備をもっとしておけばよかった」という声が多く見られました。

●読者アンケート回答の一部(回答数 = 90人)
・鉛筆の持ち方。正しい鉛筆の持ち方がマスターできていなかったため、うまく書けなくて、書くことを嫌がるようになった
・ひらがな、カタカナの読み書きを習慣づけておけばよかった
・簡単な足し算・引き算ができるようにしておけばよかった
・45分間の授業に集中できるように、机に向かう時間をつくり、慣れさせておいたほうがよかった

 一方、専門家に聞くと2020年度から小学校で新しい学習指導要領に基づく授業が始まるため、「これまでのように、単純に『小学校に入るまでに授業中は45分間座っていられるようにしましょう』『このくらい読み書きができるようにしておきましょう』といった準備が必要な授業とは内容が変わってきます」(乳幼児教育学を専門とする玉川大学教育学部教授の大豆生田啓友さん)。

 新しい学習指導要領では、文部科学省は「『何を学ぶか』だけでなく『どのように学ぶか』も重視して授業を改善」するとして、「主体的・対話的で深い学び」を推進しています。いわゆる「アクティブラーニング」の実践を掲げているのです。

 これを受けて、4月以降は「小学校でも子どもたちが主体的に取り組める授業が増えていくでしょう。子どもの興味・関心を大切にし、その問いや声を聞きつつ対話的に行うような教育が重視されます。例えば低学年の生活科の授業の中で、『学校探検』をすることがあります。今までは先生が決めたコースで、先生が一方的に説明しながら探検していたかもしれません。今後は、子どもたちの声を聞いて探検のコースを変えたり、入れない部屋があったら『ここはどうして入れないのかな? 理由を考えよう』などと対話したりしながらより深い学びを得ていく――といった授業に変化することが考えられます」(大豆生田さん)。

 さらに小学校入学後まもなくの時期には、保育園や幼稚園で実施されていた幼児教育の延長線上にある、遊びを通して学びを得ていくスタイルの授業が導入されるといいます。こうした授業を「スタートカリキュラム」などと呼びます。スタートカリキュラムでは遊びを交えつつ、生活科と、国語、算数、図工といったその他の教科をシームレスにつないだ授業を取り入れます。

 新1年生向けにスタートカリキュラムを取り入れている横浜市立池上小学校校長の寳來生志子さんは「大人はつい『新1年生は入学したてで何も分からない』扱いをしがちですが、実際は保育園・幼稚園で遊びを通して多くの学びを得ています。例えば公園でドングリを拾って、友達と『何個拾ったよ』『私のほうがたくさん拾ったよ』と比べることで、知らないうちに数の概念を学んでいるのです。そういった今までの経験を大事にしながら、小学校での新生活になめらかに接続できるような授業を目指しています」と語ります(スタートカリキュラムについては、「後編」で詳しく紹介します)。

 こうした変化を踏まえた上で、親は就学を控えた子どもに具体的にどんなことをしてあげるといいのでしょうか。

 次ページ以降で詳しく紹介します。