食物アレルギーの研究は日々進化しており、数年前の常識が今ではがらりと変わっていることもあります。そこで子どもの食物アレルギーの基礎から最新の予防・治療の知識までを、東京慈恵会医科大学 葛飾医療センター 小児科 助教の堀向健太さんにQ&A形式で聞きました。食物アレルギーの基礎知識を紹介した「上編」に続き、「中編」では最新の研究に基づいた実践的な食物アレルギー対策をまとめます。ここ数年の研究から、鶏卵など一部の食物についてアレルギー予防の方法が明らかになってきたといいます。

【年齢別特集 保育園のママ・パパ向け】
(1) 子どもの食物アレルギー新潮流「皮膚のケアが重要」
(2) 食物アレルギー疑問解消 予防できる?加熱効果は? ←今回はココ
(3) 離乳食は遅い方がいい?食物アレルギー今どきの常識
(4) 就学前には子どもの興味・自己肯定感を育てよう
(5) 入学直後の授業スタートカリキュラムはどんなもの?

完全除去はせず、「可能な範囲で食べ続ける」のが大事

「食べたらじんましんが出た!」食物アレルギーかどうか確かめるには?

 医師が食物アレルギーを診断する際には、まず「食べたもの」「食べた量」「症状」「発症までの時間」「同じものを食べたときの再現性」などについて問診します。それで診断がつかない場合は、皮膚検査や血液検査を実施して総合的に判断するのが一般的です。

・皮膚検査(プリックテストなど)
皮膚にアレルゲンを接触させ、IgE抗体が結合した肥満細胞が反応するか確認します。皮膚の赤み、発疹の大きさなどで食物アレルギー症状の起きやすさを診断します。あらゆる食物アレルギーの検査ができますが、調べたいアレルゲンを個別に用意する必要があります。

・血液検査
採血し、特定のアレルゲンに対応するIgE 抗体が血液中にどのくらい存在するか調べます。IgE抗体の量で食物アレルギー症状の起きやすさを診断します。一度の採血で複数のアレルゲンについて検査できます。

 とはいえ、注意したいのは血液検査や皮膚検査の結果が陽性でも、「実際にどのくらいの量のアレルゲンを取ると発症するか」は正確には分からないという点です。

 食物アレルギー症状が出るかどうかは、「アレルギーの原因となる食物を食べた量」と「体内のIgE抗体の量」によって変化します。鶏卵や牛乳など、一部のアレルゲンについては血液検査の結果に基づいて、「どのくらいの量のアレルゲンを食べると症状が出るか」を予測する「プロバビリティカーブ」と呼ばれる値があります。しかし、食物アレルギーの発症は患者の病歴など、さまざまな要因で変化します。また、マイナーなアレルゲンについては発症率を予測するだけの十分なデータがないケースも多いです。

 そのため、「その食品をどのくらい取るとアレルギー症状が出るか正確に調べる」ためには、実際に食べてみてどうなるかを確認する「食物経口負荷試験」が必要です

・食物経口負荷試験
アレルゲンとなる可能性がある食べ物を少量ずつ、時間をあけて複数回に分けて食べ、症状を確認する試験です(症状が出なければ、目標の総量に達するまで試験を続けます)。

「本当にその食品のアレルギーなのか特定する」「どのくらい食べると症状が出るか分かる」「特定のアレルゲンに耐性ができたかどうか確認する」など食物アレルギーの状態について正確に分かりますが、試験の途中で重篤なアレルギー症状が起こる可能性があるなど、危険を伴います。血液検査や皮膚検査で明らかに重症の食物アレルギーと分かっている場合は、食物経口負荷試験は実施しないこともあります。

そのため、食物経口負荷試験は経験のある専門施設で、アレルギー専門医の指導の下で行うのが良いでしょう。食物経口負荷試験を実施している施設は食物アレルギー研究会のWebサイト(※1)で、アレルギー専門医については日本アレルギー学会のWebサイト(※2)で調べられます。

 この後もまだまだQ&Aが続きます!

・食物アレルギーが発症したら、アレルゲンとなる食べ物は一切食べない方がいいの?
・乳幼児期の食物アレルギーは「治る」のでしょうか?
・食物アレルギーって予防できるの?
・アレルゲンとなる食べ物を加熱したら、食物アレルギーの症状は抑えられる?