日本の食物アレルギーの有病率は乳児で約10%、保育園児で約5%、学童期以降が1.3~4.5%程度(※1)と年齢が低いほど高く、「予防のため何をしたらいいのか」「発症後はどうすべきか」不安を抱いているママ・パパも多いでしょう。食物アレルギーの研究は日々進化しており、数年前の常識が今ではがらりと変わっていることもあります。そこで食物アレルギーの基礎から最新の予防・治療の知識までを、東京慈恵会医科大学 葛飾医療センター 小児科 助教の堀向健太さんにQ&A形式で聞きました。

記事の「上編」となる今回は、子どものアレルギーを理解するために親がぜひ勉強しておきたい基礎知識をお届けします。2月10日の週に公開予定の「下編」では、新しい研究に基づいたより実用的な食物アレルギー情報をまとめます。

【年齢別特集 保育園のママ・パパ向け】
(1) 子どもの食物アレルギー新潮流「皮膚のケアが重要」 ←今回はココ
(2) 食物アレルギー疑問解消 予防できる?加熱効果は?
(3) 離乳食は遅い方がいい?食物アレルギー今どきの常識
(4) 就学前には子どもの興味・自己肯定感を育てよう
(5) 入学直後の授業スタートカリキュラムはどんなもの?

食物アレルギーは免疫機能の行き過ぎた反応

そもそも食物アレルギーとはなんなのでしょう?

 食物アレルギーは、特定の食べ物を摂取した際に体内で過剰な免疫反応が発生し、皮膚のかゆみ、鼻水、呼吸器がゼーゼーするなどさまざまな症状が起こることです。

 免疫は、ウイルスや細菌など害をなす「異物」が侵入してきた際、これらを排除して体を守る機能です。食物アレルギーの症状は、本来は体に有益なはずの食べ物に対して免疫機能が行き過ぎた反応を起こし、害のある異物と見なして排除しようとするために起こります。ちなみに体に入ってくる異物を「抗原」、その中でアレルギー症状を引き起こすものは特に「アレルゲン」と呼びます。

食物アレルギーの原因になる食べ物には、どんなものがあるのでしょう?

 食物アレルギーの原因となる主な食品は鶏卵(39%)、牛乳(21.8%)、小麦(11.7%)です(※2)。この3つで食物アレルギーの72.5%を占め、「3大アレルゲン」とも呼ばれます。その他、原因として多いのはピーナツなどナッツ類、果物、魚卵、甲殻類などです。

 子どもの年齢別に新規に食物アレルギーを発症する際の原因となる食物を見ると、0歳では3大アレルゲンが多いですが、2~3歳では魚卵、4~6歳では果物が多くなっています(※2)。

 なお食物アレルギーでは、ほとんどのアレルゲンは食物に含まれるたんぱく質が原因です。1つの食品には複数の種類のたんぱく質が含まれるので、例えば「卵アレルギー」と一口に言っても、厳密には複数のアレルゲン(たんぱく質)が関与している可能性があります。

 次ページ以降、食物アレルギーが起こる際、体ではどんなことが起こっているのかもう少し詳しく見ていきましょう。実は食物アレルギーには、皮膚の状態が密接に関係しています。こうした仕組みを理解しておくと、下編で紹介する実践的な知識もより分かりやすくなります。