この時期にかかりやすい感染症の注意点や予防法について、前回に引き続きマーガレットこどもクリニック(東京・渋谷)の田中純子院長の解説をお届けします。保育園で感染が広がりやすいノロウイルスとロタウイルスによる胃腸炎と、秋冬も引き続き流行が見られるRSウイルスの対策を紹介します。

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ウイルスが原因の胃腸炎は保育園で広がりやすい

 秋から冬に保育園で猛威を振るうのが胃腸炎です。胃腸炎を引き起こす細菌やウイルスはたくさんありますが、代表的なのがノロウイルスとロタウイルスです。ノロウイルスやロタウイルスといったウイルスにより下痢や嘔吐(おうと)を引き起こす胃腸炎を「感染性胃腸炎」と呼ぶこともあります。冬の初めはノロウイルス、冬の終わりから春にかけてはロタウイルスが原因の胃腸炎が流行する傾向があります。どちらのウイルスも、数個~100個程度のウイルスが体内に入れば発症し、保育園でしばしば集団感染が起こる感染力の強い胃腸炎です。

 患者の嘔吐物に直接触れたり、汚染されたドアノブやおもちゃ、遊具等から間接的に接触したりして、体内に病原体が入ることで感染します。病原体を含んだ食べ物や飲み物を口にすることでも感染します。嘔吐物の処理が不十分な場合に、乾燥した嘔吐物からウイルスが舞い上がり、それを他の人が吸い込むことでも発症することがあるため、油断ができません。

 どちらのウイルスも主な症状は嘔吐や下痢で、熱は出ることも出ないこともあります。「ロタは白っぽい下痢が特徴」ともいわれますが、そうでないことも多いので、便の色で判断はできません。

 ウイルスが特定されても治療法は共通で、体外に排出され回復するのを待つしかありません。また、検査ができるウイルスは限られていますが、この他のウイルスや細菌による下痢でも、人に感染を起こします。このため、病原診断をする意味はあまりなく、一般的な医療機関には原因ウイルスを特定するキットは置いていないことが多いです。「感染性胃腸炎」かそうでないかを判別するために受診をする意味もあまりありません。

 赤ちゃんが胃腸炎になったら、どんなことに注意しなければならないでしょうか? 次ページからお伝えします。