「赤ちゃんなら夜泣きは当たり前」。そう頭では理解していても、毎日眠れない日々が続くと「いつ終わるのか」「育休明けは大丈夫か」と不安になります。そもそも、なんで赤ちゃんは夜泣きするの? 夜泣きへの対策と、「自分で寝る力」を育てる方法とは? 兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どものリハビリテーション・睡眠・発達医療センター長で、日本初の「夜泣き外来」を開設した小児科医の菊池清さんに話を聞きました。

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(4) 夜泣き外来医師 夜泣きが続くと脳の働きに影響が

生後すぐの赤ちゃんは眠りの浅い「レム睡眠」が大人の倍以上

こんなことを聞きました
●眠りに誘う「寝る前の儀式」とは?
●生後6カ月を過ぎたら、夜泣きをしないよう誘導するコツがある!
●復職前の夜間断乳、うまくいくコツ
●「上手に眠る子」に育てるために、心がけたいこと

日経DUAL編集部(以下――) 赤ちゃんの睡眠を大切にしながら、夜泣きをしないよう誘導するコツがあると聞きました。そもそも、生後間もない赤ちゃんはどういうメカニズムで寝たり起きたりを繰り返すのでしょうか。

菊池清さん(以下、敬称略) 生後1カ月までの赤ちゃんは1日のほとんどを眠って過ごします。その中で、お母さんの胎内にいたときから刻まれている「超日リズム」(数分から数時間周期の生体リズム)によって、2~3時間ごとに泣いておっぱいを欲しがります。

 次第に赤ちゃんにも体内時計がつくり出され、24時間周期の「概日リズム」ができてくる。概日リズムとは、昼は活動し、夜は眠れるようになる生理現象(自律神経活動やホルモン分泌など)のこと。人は24時間周期で寝て起きて食べて……という活動を繰り返し、これに合わせて細胞や臓器が動くようになっています。生後4~5カ月頃になると、この概日リズムが明確になり、眠り続ける力も強くなっていくのです。

―― 生まれて間もない赤ちゃんには、24時間周期のリズムがまだ備わっていないのですね。

菊池 そうです。そのリズムができるまでは頻繁に寝たり起きたりを繰り返します。また。人間には浅い眠りの「レム睡眠」と、ぐっすり熟睡している状態の「ノンレム睡眠」がありますが、実は、生後0カ月の赤ちゃんは浅い眠りのレム睡眠の割合が最も多いのです。

 大人のレム睡眠の割合は18.9%ですが、1カ月未満の子のレム睡眠の割合は50%と高く、さらに体が未発達で胃袋も小さい。眠りが浅いうえ、すぐに空腹を感じるからすぐに起きてはおっぱいを欲しがるのです

 レム睡眠の割合は0歳の間に大きく変化します。生後3~5カ月では40%に、1歳になると30%程度まで下がる。これに先ほど話した24時間周期の概日リズムも付くようになるから、次第に夜しっかりと眠れるようになるわけです。

0歳児の眠りは月齢によって大きく変化する

―― 0歳児の中でも夜泣きの段階があるのですね。

菊池 体が育つ中で、次第に24時間周期のリズムが赤ちゃんの体に合ってきます。さらにレム睡眠の割合も減り、1回に飲む母乳やミルクの量が増えることで、生後1カ月ごろからは短いながらもまとまって寝る時間が増えてきます。

 首が据わる4カ月以降にもなると、子どもによっては夜7~8時間はまとまって眠るようになり、この頃から夜泣きも減ってきます。生後6カ月ごろ、離乳食が始まりお腹が持つようになると夜泣きはぐっと減る。1歳を過ぎると、日中の活動も増え、レム睡眠の割合が下がることからしっかりと眠れるようになります。

0歳児の眠りの変化
●~生後1カ月:ほとんど1日中寝ている。昼夜問わず、2~3時間おきに泣いて起き、おっぱいを求める
●1~3カ月:数時間だが、少しずつまとまって眠るようになる
●4~5カ月(首が据わる頃): 軽い夜泣きをしつつ、夜7~8時間はまとまって寝る
●6カ月以降(離乳食開始以降):夜泣きも減り、安定して夜まとまって眠るようになる

―― とはいえ、セオリー通りにいかず、6カ月以降も頻繁に起きたり、1歳過ぎても夜泣きをしたりする赤ちゃんも多いですよね。無理のない方法でスムーズに眠れるよう、自分で寝付く力を育てるために、どんな工夫をすればいいでしょうか。