妊娠後期に入ると、間もなく産休、そして出産を迎えます。「仕事ができるのもあとわずか」と焦ったり、産休が楽しみとワクワクしたり、と様々な気持ちで落ち着かないという妊婦さんも多いのではないでしょうか。そこで、産休前、産休に入ってから気を付けたいことを、専門家に聞きました。

【年齢別特集 妊娠・育休中のママ・パパ向け】
(1) 働く妊婦 お産&育児の体力をつける夏ウォーキング
(2) 妊娠中の冷えを防ぐポイント 食事、服装、エアコン
(3) 働く妊婦さん、産休直前・産休中に気を付けたいこと  ←今回はココ
(4) 妊娠中の歯のケアが赤ちゃんにも影響する3つの理由

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

ワーママ妊婦さんの大切な仕事は無事に産休まで過ごすこと

 妊娠、出産しても女性が働き続けるのが当たり前の社会になりました。ワーママ妊婦さんの出産に数多く関わってきた助産師の土屋麻由美さんは「初産婦さんは、妊娠後期になると、この先、産休や育休があると思って頑張りすぎになりがち」と心配します。「妊婦さんが働くうえで一番大切なのは、産休に入る時点まで、自分が健康に過ごし、きちんと引き継ぎのバトンタッチをすることです。産休に向けて『今やらなくては』と思う気持ちがあるかもしれませんが、仕事の抱え込みは妊娠中の体調を崩し、切迫早産などで急に入院することにもつながる可能性があります。すると、メールや電話で引継ぎをしなくてはならず、思いがけず職場に迷惑をかけることになるかもしれません」

助産師の土屋麻由美さん。東京・練馬区で麻の実助産所を開業。大学病院、助産所、クリニック、自宅など多岐な分娩に関わってきている。産後ケア、母乳指導などを行う一方で、望まない妊娠に関する相談窓口「にんしんSOS東京」などの運営・相談に携わっている
助産師の土屋麻由美さん。東京・練馬区で麻の実助産所を開業。大学病院、助産所、クリニック、自宅など多岐な分娩に関わってきている。産後ケア、母乳指導などを行う一方で、望まない妊娠に関する相談窓口「にんしんSOS東京」などの運営・相談に携わっている

 土屋さんは、ワーママ妊婦さんが頑張りすぎることが、同僚や後輩が妊娠したときの働き方に影響を及ぼす可能性もある、と話します。「自分は乗り切れたとしても、次の人は『〇〇さんがやっていたから』と同じように無理せざるを得なくなるかもしれません。そのようなことにならないためにも、妊娠の身体は特別なのだということを意識して、『今日は早めに帰ります』という日も作り、自分と赤ちゃんの体を守りましょう。少しずつ、自分の仕事を他の人に渡していき、無事産休に入るまで、仕事と妊娠を両立させることを大切にしましょう」

 土屋さんは、産休より少し早めの時期に、仕事を引き継ぐのがよいのでは、と提案します。「職場の状況にもよると思いますが、早めに引き継げば、その後のフォローも可能です。後輩は、仕事を任されたことで、自分の能力を認めてもらえたという自信につながります」

 これまでバリバリと働いてきた人にとって、自分の仕事を渡してしまうのは寂しいかもしれません。「しかし復帰後に育児をしながら働くのは、今とは比べ物にならないほど時間の余裕がなくなります。無理をすれば、赤ちゃんに負荷がかかり、頻繁に熱を出したりするかもしれません。産後は母として女性として生きるために、仕事への向き合い方を見直す必要が出てくるのです。その前に自分がいなくても職場が回るようにしておくことは、復帰後の自分のキャリアにも役に立つでしょう」。

 それでも職場を離れることに焦りや不安がある場合、どのように対応したらよいのでしょうか。また妊娠後期には、出産・育児に向けて準備しておきたいこと、知っておきたい生活の注意点がたくさんあります。次ページから、働く妊婦さんの出産事情に詳しい産婦人科ドクターに聞いていきましょう。

<次のページからの内容>

● 休むことへの焦り・不安があると産後育児に影響が
● 自転車、自動車の運転は、リスクを理解して十分注意
● 産休に入っても生活ペースは大きく変えない
● 破水? 尿漏れ? 迷ったら受診。遅れると感染リスクがある
● 2人目以降妊婦はいざというときの子どもの預け先を確保して