妊娠28週~39週の約3カ月間を指す妊娠後期。一般的に「安定期」と呼ばれる時期でも、その他の時期でも、出産まで、リスクがなくなることはありません。

日本は周産期死亡率も妊産婦死亡率も、グローバルで見て大変低く、周産期医療のレベルは非常に高いと言われていますが、それでも「もしも」の場合はあるのです。山王病院の大柴葉子副院長に、10年前から対策に特に力を入れている周産期(妊娠22週から出生後7日未満までの期間)医療について聞きました。

【年齢別特集 妊娠・育休中のママ・パパ向け】
(1) 出産まで3カ月で胎児の体重はまだ半分 注意点は
(2) 妊娠後期、かぜ症状や便秘症状に潜む大きなリスク ←今回はココ
(3) 高齢出産に伴う悩み 精神面にも要注意
(4) 「マタ旅」リスク管理 早産多いのは妊娠28週以降

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

 妊娠中はとにかく自分の体調やおなかの様子が少しでもおかしいと気になるものです。それは「安定期」の後期でも同じ。口コミで伝わったことが気になり、ネットを調べまくるというのは、妊娠中のあるあるでしょう。今回、山王病院の大柴葉子さんに、以下の気になる質問をぶつけました。

□ ただの風邪かな? と思っても受診してOK?
□ 胎動が減少したら、赤ちゃんが下がってきたという証拠 or 危険?
□ 深夜に出血があり、「おしるし」だと思って朝まで待っていたら?

妊娠後期のリスク1:出産に伴うリスクを理解する

妊産婦死亡事例、最も多い要因は出血。脳性麻痺の研究も進歩

 妊娠後期のリスクとして最も高いものは、分娩に伴うリスクです。

 「日本の周産期死亡率(妊娠22週以降の死産数+早期新生児死亡数)、妊産婦死亡率(産後1年未満の死亡含む)は非常に低く、先進国の中でも群を抜いています」(大柴さん)

出典:厚生労働省「第1回周産期医療体制のあり方に関する検討会」資料「周産期医療体制の現状について」より
出典:厚生労働省「第1回周産期医療体制のあり方に関する検討会」資料「周産期医療体制の現状について」より

 その背景には約10年前から始まった「妊産婦死亡事例」の届け出制度が関係していると言います。「日本産婦人科医会では、出産を機に母体が失われる事例が一件でも減るように全国的な集計を始め、10年を経て妊産婦死亡の主な原因が分かってきました」(大柴さん)

 その結果、一番多い原因は出血と分かったといいます。

<次のページからの内容>

● 重度脳性麻痺を撲滅するためにも役立てられる「産科医療補償制度」
● ただの風邪? 切迫早産や胎盤早期剥離の症状のリスクは
● 胎動減少、出血は深刻なリスクが隠れていることも
● 受診の判断は子どもが生まれた後のトレーニングに