新型コロナウイルスの影響で先行き不透明な日々が続いていますが、出産後の生活や仕事のスケジュールについて考えるとき、忘れてはならないのが赤ちゃんの「予防接種」です。生後2カ月から始まり、特に0歳代では数多く受ける必要があります。後で慌てないためにも早めに知っておいたほうがいい、最新の予防接種事情について、2回に分けてお伝えします。今回は、そもそもなぜ予防接種が必要なのか、VPDとは何か、などについて小児科医の早川依里子さんに聞きます。

【年齢別特集 妊娠・育休中のママ・パパ向け】
(1) 予防接種なぜ必要?子を守るため知っておきたいこと ←今回はココ
(2) 【動画】出産前の不安を緩和 パパのタッチングケア
(3) 変化する予防接種事情 出産前に知識を得て準備を
(4) コロナ禍で想定外の職場復帰や育休延長 心構えは?
(5) コロナ以降の育休 発想の転換がキーワードに

コロナ報道でもよく出てくる「ワクチン」という言葉

 新型コロナウイルスに関する報道を見ない日はありません。「『新型コロナウイルスのワクチンはいつできるか』などの話題を日常的に見聞きするようになったため、多くの人にとって、『ワクチン』という言葉が身近になり、ワクチンで感染症を防げるという認識は以前よりも一般的に広がったと思います」(伊奈病院・小児科医の早川依里子さん)

 そもそも予防接種とは、ワクチンを接種することで、その病気に対する抵抗力(免疫)を先に獲得しておき、感染や重症化を防ぐ方法です。ワクチンとは何なのでしょうか。ワクチンは「生ワクチン」と「不活化ワクチン(トキソイド含む)」の2種類に大きく分けられます。「生ワクチン」は生きている細菌やウイルスの病原性(毒性)を弱めたもの。接種によって、その病気に軽くかかった状態になり、体内で細菌やウイルスが増え、免疫ができます。「不活化ワクチン」は、病原性(毒性)をなくした細菌やウイルスから免疫を作るのに必要な成分だけを取り出したもの。接種しても体内で増えないので免疫をつけるために数回受ける必要があります。

 新型コロナウイルスへの恐れから、予防接種のために赤ちゃんを連れて病院へ行くことに不安を感じる親もいます。「不安に思う気持ちは分かりますが、赤ちゃんが感染しやすく、かつ、感染したら重症化する可能性のある怖い病気は、ほかに多数あります。新型コロナウイルスの流行について、医療関係者は長いスパンで捉えています。次の流行の波が来る可能性も否定できず、そのたびに予防接種を延期すると、赤ちゃんにとって大きなデメリットになります。

 もし予防接種の予定を延期したという場合は、できるだけ早く接種して、スケジュールを取り戻しましょう。新型コロナウイルスに対して不安があるなら、病院に電話をして状況を聞き、予防接種の専用時間帯を設けているなどの対策について確認するといいでしょう」

 VPDという言葉を聞いたことがありますか? 「Vaccine Preventable Diseases=ワクチンで防げる病気」の略です。感染したら合併症が起きたり、後遺症が残ったり、重症化する可能性があるのでワクチンが開発された経緯があります。「免疫をつけるためには、複数回接種が必要なワクチンがほとんどです。それらの病気に感染しやすい、または感染すると危険性が高い時期に、免疫がついている必要があります」

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