昨年末から今年にかけて世界的に麻疹(はしか)が大流行しています。妊娠中に麻疹にかかると、妊婦や胎児にどのような影響があるのでしょうか。流行の背景や対策について国立感染症研究所感染症疫学センター室長で小児科医の多屋馨子さんに聞きました。

【年齢別特集 妊娠・育休中のママ・パパ向け】
(1) アラフォー男性は要注意 風疹対策は夫婦で妊娠前に
(2) 麻疹は胎児にも怖い病気 妊活前に知りたいことに ←今回はココ
(3) 夜泣きは脳の発達と関係が 楽しすぎた日は要注意
(4) 夜中の授乳にパパ参戦 寝不足ママを救うのは?

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

2019年の麻疹流行は前回を上回る勢い

 麻疹(はしか)の流行が世界的に続いている。今年初めの三重、その後の大阪の商業施設での集団感染は記憶にある人も多いだろう。「三重県の流行は50人ほどで収束しましたが、大阪の流行は100人を超え、ようやくおさまってきました」と多屋さんは話す。感染症発生動向調査によると、日本での麻疹の流行は2018年末から始まっており、2019年第1週~17週の麻疹報告数(2019年5月7日現在)は450例で、前回流行した2014年の1年間の報告数462例に早くも迫る勢いだ

 海外でもフィリピンなどで麻疹の大きな流行が発生している。ニューヨークでは4月に非常事態宣言が出され、感染する恐れのある対象者に予防接種が義務付けられた。違反者には罰金が科されるという。

「感染症発生動向調査:2019年4月24日現在」国立感染症研究所 感染症疫学センターより転載
「感染症発生動向調査:2019年4月24日現在」国立感染症研究所 感染症疫学センターより転載

マスクで感染は防げない。合併症も深刻

 麻疹は、麻疹ウイルスによる感染症で、感染して10~12日の潜伏期間の後、発熱、発疹、咳、鼻水、のどの痛み、目の充血、めやになどの症状が出る。接触、飛沫、空気のいずれの感染経路でも感染する。感染力はとても強く、空気感染をするため、マスクでの予防は難しい

 肺炎、中耳炎、クループなどの合併症を起こす頻度も高い。1000例に0.5~1例の割合だが脳炎を合併することもあり、肺炎と共に、麻疹での死亡の原因となっている。

 赤ちゃんや幼児を持つDUAL世代が知っておきたいのが、ワクチンを受けていない乳幼児期に麻疹にかかった後、無症状の期間を経て7~10年後に、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という神経性の病気になることもあるということだ。

<次のページからの内容>

● SSPEの初期症状は学校の成績や普段の行動に現れる
● 日本固有の麻疹は排除状態。「輸入麻疹」が流行の原因
● 感染者が多いビジネスパーソン世代
● 乳児の流行地への渡航はできるだけ避けたい
● 妊婦がかかると重症化し、胎児のリスクも高まる
● 水痘、ムンプスも気を付けたい感染症。妊娠前に抗体検査を
● 母親に抗体があれば赤ちゃんに移行し、病気から守られる