今年に入り世界的に麻しんが流行。風疹の流行も収まる気配はありません。感染症は妊婦や胎児にどのような影響があるのでしょうか。流行の背景や対策について国立感染症研究所感染症疫学センター室長で医学博士の多屋馨子さんに聞きました。

【年齢別特集 妊娠・育休中のママ・パパ向け】
(1) アラフォー男性は要注意 風疹対策は夫婦で妊娠前に ←今回はココ
(2) 麻疹は胎児にも怖い病気 妊活前に知りたいこと
(3) 夜泣きは脳の発達と関係が 楽しすぎた日は要注意
(4) 夜中の授乳にパパ参戦 寝不足ママを救うのは?

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

妊婦が風疹にかかると赤ちゃんが病気になる可能性がある

 細菌やウイルスが母親から赤ちゃんに感染することを「母子感染」という。妊娠前から細菌やウイルスを持っている人もいれば、妊娠中に感染する人もいる。妊婦健診では、感染の有無を知るために感染症検査(抗体検査等)を行い、感染症が見つかった場合には、治療や指導が行われる。妊婦健診で調べる感染症は、B型肝炎ウイルス、梅毒、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒトT細胞白血病ウイルス-1型(HTLV-1)、風疹ウイルスなどだ(医療機関や、経過により異なる)。

 この中で風疹ウイルスは、お母さんが妊娠中に感染した場合、赤ちゃんに母子感染し、先天性風疹症候群(CRS)を引き起こす可能性がある。病気になる頻度は、妊娠1カ月で感染した場合で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%といわれている。症状は、難聴、心疾患、白内障、精神や身体の発達遅れなどだ。

 風疹はかつて2012年~2013年にかけて大規模な流行があり、2年間で1万6000人を超える報告があった。この流行の影響で、45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断されている。

 その後、風疹患者の報告数は減少したが、2018年夏から再び報告数が急増し、2019年も引き続き報告数が多く推移している。国立感染症研究所 感染症疫学センターが発表した「風疹流行に関する緊急情報:2019年 4 月17日現在」によると、2019年第 1~15 週の累積患者報告数は1276 人に上っている。先天性風疹症候群と診断された赤ちゃんも1人報告されている。

<次のページからの内容>

● 今年、風疹が流行中。患者はアラフォー男性が多数
● 予防接種制度の影響で、抗体を持つ成人男性が少なくなっている
● 母子感染を防ぐために、女性は2回ワクチン接種を
● 抗体が低い年代の男性対象に無料検査・接種が行われる