育児は、パパとママが手を取り合って担うべき、人生の一大事業です。

わが子の成長を少しでも近くで見守り、妻を助けるためにも男性の育休取得が求められています。しかし、実際に取得している人はわずか5%程度にとどまっています。「うちは育休を取った男性社員なんていないから……」と諦めている人もいるかもしれませんが、育休の取得は会社の制度の有無にかかわらず、個人の意思で取得できる「権利」です。

まずは、育児休業とはどのような制度なのか、知ることから始めましょう。

(日経DUAL特選シリーズ/2019年4月収録記事を再掲載します。)

【年齢別特集 妊娠・育休中のママ・パパ向け】
(1) 育休取得はパパが持つ権利 まずは制度を知ろう ←今回はココ
(2) 「育休を取ってよかった」新米パパに伝えたいこと
(3) ベビーグッズベストバイ 抱っこひも、ベビーカー
(4) 子育てがラクになるベビーグッズ8選

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

男性の育休取得率は5.14%

 2020年までに男性の育児休業取得率13%を目指す――。

 政府は上記のような目標を閣議決定していますが、2017年度の男性の育児休業取得率は5.14%。前年度より1.98ポイントアップして過去最高を記録したものの、まだまだ低い水準です。残り数年という状況で倍以上に高める必要があり、達成の見通しはいまだ立っていないといえるでしょう。

 そもそも13%というのは、本来高い目標ではありません。ノルウェーでは90%の男性が育休を取得しており(12年、労働政策研究・研修機構調査)、目標を達成できたとしても海外の“男性育休先進国”には遠く及ばないのが現状です。

 男性の育休取得を妨げている、最大の原因は何でしょうか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、「育児休業を取得しなかった理由」として、「業務が繁忙で職場の人手が不足していた」が27.8%と最も高く、僅差で「会社で育児休業制度が整備されていなかった」(27.5%)、「職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった」(25.4%)と続きました。「職場が忙しい」「取得できる雰囲気ではない」ことが育休を取得できない大きな要因になっていることが見て取れます(「平成29年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書 労働者アンケート調査結果」より)。

 しかし、本来育児休業は法律の定めにより、一定の要件を満たせばどんな企業に勤めていても取得できるものです。それは男性でも女性でも同じことで、「会社の制度の有無」も関係ありません。したがって、本来なら「会社で育休制度が整備されていなかったために、育休が取れなかった」という事態は起こり得ないはずなのです。

 従業員側も「会社に制度がないと取得できない」と思い込んでいたり、育休に関する情報が不足していたりすることも、取得を妨げる一因になっているかもしれません。

 職場の雰囲気、上司や周囲の無理解、本人の意識や情報不足。これらの要因に加えて、「妻の意識」も重要だと指摘するのは、自身も育休を取得した、東レ経営研究所のチーフコンサルタントでNPO法人ファザーリング・ジャパン理事の塚越学さんです。塚越さんによれば、そもそも育休取得について夫婦間で話し合っておらず、妻が半ば自動的に一人で育休を取得するケースが多いそうです。

 「講演などで、ママたちに『妊娠が分かった後、“育休、どっちが取る?”と夫婦で話し合いましたか?』と尋ねると、『話し合った』と答えるママは20人に一人いるかどうか。つまり妻側も、『育休は私が取るもの』『夫の会社は育休を取れるわけがない』といった思い込みがあるのです。職場の無理解などはもちろん改善しなければいけない深刻な問題です。ただ同時に、『妻から夫への投げかけ』も、男性を後押しする上では大事なことだと思います」

 まずは、男性が育休の制度について知ること、そして妻も思い込みを取っ払って後押しすることが必要だということです。それでは、次ページから育休の制度について説明していきます。

<次のページからの内容>

● そもそも「育児休業制度」とは?
● 育児休業給付金は手取り賃金の約8割が支給
● 両立を支援するための各種制度一覧
● 企業独自の制度もチェックを
● 会社に拒否されたら労働局に駆け込むことも