働く妊婦さんは決して珍しい時代ではありません。前回の記事ではマタハラに詳しい弁護士から、「妊娠・出産、産前・産後休業や、育休などを理由として会社が不利益な取り扱いをしたり、上司や同僚が嫌がらせをすること」はマタハラであることを確認しました。職場でマタハラは当事者が明らかな分、対処が可能な面があります。一方で、電車など公共の場でのマタハラに悩んでいる人も多いことが、読者アンケートから分かりました。どのようなことが起きているのでしょうか。LINEを活用して妊婦さんへの席譲りの実験を行うなど、思いやりを実行に移すプロジェクトも紹介します。
【年齢別特集 妊娠・育休】
(1) アラフォー妊娠は血圧に注意 休めのサインを見落とすな
(2) 新型出生前診断が一般診療へ 妊婦の混乱を防ぐには
(3) 「これってマタハラ?」にママ弁護士がアドバイス
(4) 電車で駅で増加中 社会のマタハラにどう対処する? ←今回はココ
子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。
読者の半数以上が公共の場でマタハラに遭っている
電車の中で心無い言葉をかけられたり、足を引っかけられるなど、妊婦さんへのハラスメントを聞くことがあります。通勤や仕事の移動で電車やバスを利用することが多いデュアル読者にとっては、他人事ではないですね。実際にはどのようなことが起きているのでしょうか。「日経DUAL」の読者へのアンケートでは、妊娠中に駅や電車の中など公共の場でマタハラ・パタハラに遭ったことがある人の割合は54%に上りました。
ハラスメントの内容は下記の通りです(複数回答)。
・電車などの席を譲ってもらえない 85.3%
・妊婦であることが分かって舌打ちされたり嫌な顔をされた 29.4%
・蹴られるなど身体的な危害を受けた 14.7%
・電車などの席を譲らされた 8.8%
・妊婦であることが分かって傷つくことを言われた 8.8%
最も多かったのは、妊婦であることが分かっているのに席を譲ってもらえないという体験です。「自分の前に座っている人がマタニティマークを見たとたん目を閉じてしまった」という声が多数ある一方「長時間労働、長距離通勤の都会では仕方がないことかも。自分も妊娠前はそうしたことがあった」というあきらめの声も聴かれました。また最近は、車内の多くの人がスマホを見ているため「マタニティマークや大きなおなかに気づいてもらえない」ということもあるようです。
編集部が驚いたのが、「蹴られるなど身体的な危害を受けた」という人が15%近くもいたことです。弁護士の高橋麻理さんは、「蹴ったり、お腹をぶったりする行為は、暴行罪ですし、それにより、けがを負わせたら傷害罪です。このような被害を受けたら、警察に被害を申告し、捜査を促すことができます。ただ、加害者が、素直に認めず、『自分はやっていない』『手が当たっただけだろう』などと主張することもあり、それを覆す目撃証言や防犯カメラなどの証拠がない場合は、捜査が進みにくいこともあります。しかし、妊娠している女性に暴力を振るうなどという行為は、極めて悪質です。このような被害に遭われたら、すぐに周囲の乗客に助けを求めるとか、駅員に知らせるなどするのがよいでしょう」と話します。
では、公共の場でハラスメントに遭わないために、DUAL読者はどのような対策をしているのか、見てみましょう(複数回答)。
・電車やバスが混む時間、車両を避ける 39.7%
・優先席に座る 39.7%
・電車やバスでマタニティマークを隠す 19.1%
・おなかが目立たないようにする 10.3%
身を守るためにマタニティマークを隠す妊婦がいる
マタニティマークを隠したり、おなかが目立たないようにしているというのは、妊婦さんに対する風当たりが強いことを経験しているからでしょうか。母性保護の観点からも本来は守られるべき立場にいる妊婦さんが、妊娠を隠さないと安心して電車に乗れないというのは残念なことです。
ハラスメントに遭ったのは第1子のときが88.9%、第2子のときは40.7%でした(複数回答)。第1子でのハラスメント経験から第2子以降では早めに時短を取るなど、慎重な対策を取るようになっているのかもしれません。
次ページからは、読者が電車など公共の場で受けたハラスメントのエピソードを紹介します。
● LINEを使った席譲りの実験が行われた
● 臨月での満員電車。子ども達への思いがサービス開発の原点