妊婦さんにとって、おなかの赤ちゃんが健康かどうかはとても気になるもの。しかし、前回の記事でも触れたように、女性の卵子は生まれたときから卵巣の中にあるため加齢とともに老化し、赤ちゃんの染色体異常のリスクも高くなります。35歳以上での妊娠・出産が当たり前になってきた現代では、そうしたリスクを調べる「出生前診断」にも大きな関心が集まっています。

 そこで、今回は新型出生前診断(NIPT)の臨床研究などを行う組織・NIPTコンソーシアムの研究協力者でもある山王バースセンター院長の北川道弘先生と、『出生前診断~出産ジャーナリストが見つめた現状と未来』(朝日新書)の著者で、日本で唯一の出産ジャーナリスト・河合蘭さんに、出生前診断の現状と今後、問題点などについて伺いました。

【年齢別特集 妊娠・育休】
(1) アラフォーは血圧に注意 休めのサインを見落とすな
(2) 新型出生前診断が一般診療へ 妊婦の混乱を防ぐには ←今回はココ
(3) 「これってマタハラ?」にママ弁護士がアドバイス
(4) 電車で駅で増加中 社会のマタハラにどう対処する?

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

妊婦にも胎児にも負担が少ないNIPTが注目されている

 出生前診断とは、おなかの赤ちゃんに先天的な異常がないかどうかを調べる検査のことです。妊婦健診で受ける超音波検査も、実は出生前診断の一つですが、それだけで確実な診断ができる検査ではありません。

 NIPTという検査を耳にしたことがある妊婦さんも多いでしょう。NIPTは新型出生前診断とも言われ、日本では2013年から臨床研究が始まっています。妊婦さんの血液を採取することで、胎児のDNAを調べることができ、染色体異常の病気である13・18・21トリソミーの可能性が分かります。的中率がとても高く、妊婦・胎児の負担が少ないことから、出生前診断の世界に大きな意識変革をもたらした検査です。

 検査方法が手軽なゆえに、検査を受ける希望者も増えています。しかし、その結果に妊婦さんや家族が混乱する可能性も高く、利用法が議論されています。

 出産ジャーナリストの河合さんも「赤ちゃんの先天性疾患は染色体異常だけではありません」と、NIPTへの過剰な期待に警鐘を鳴らします。

 「例えばダウン症の赤ちゃんが40歳の妊婦さんから生まれてくる確率は100人に1人。つまり1%ですが、その他の先天性疾患は3~5%の割合で生まれてきます。一番よく見られるのは心臓の先天異常です。出生前診断はNIPTだけではありません。「胎児ドック」「胎児超音波検査」などの名称で行われている検査は、通常の健診で行われる超音波検査よりも詳しく診るので、心臓の先天異常も含めた形態的な異常はほぼ分かります。出生前診断を受けたいと思っている方は、NIPTだけでなく、そういった検査にも目を向けるとよいでしょう

 「出生前診断には、異常の可能性を知るための『非確定的検査』と、確実に異常が分かる『確定的検査』とがあり、通常は非確定的検査で異常の可能性が高かった場合に確定的検査を受けることになります」と北川先生は話します。

 次ページでは、検査の種類と受けられる時期、分かる内容を紹介していきます。

<次のページからの内容>
● 異常の可能性が分かる非確定的検査には何があるか
● 異常が確実に分かる確定的検査とは
● NIPTの無認可施設での検査が増加している理由
● 多くの施設が実施しやすい一般診療に向けて検討を開始
● 自ら選ぶことには苦しさが伴う
● 妊婦さんや家族へのサポート体制を充実させることが必要