妊娠した後、妊娠が継続できなくなることを指す「流産」。経験者にとってはつらい出来事ですが、実は1人の女性が妊娠するなかで約15%の割合で起こる、比較的身近なものといわれています。流産の8割は胎芽・胎児側の染色体異常が原因ですが、なかには妊娠しても流産や子宮内胎児死亡などを繰り返し、出産に至らない「不育症」という症状が原因の場合もあります。

【年齢別特集 妊娠・育休中のママ・パパ向け】
(1) 流産と不育症 どこで見分ける? 治療は可能? ←今回はココ
(2) 産後の家庭を支援する「産後ケア」どの自治体で充実?
(3) 職場復帰目前! 片付け&収納を制して家事効率UP
(4) パパの料理で職場復帰パワーアップ! 家電も味方に

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

流産の原因は、回数・時期など複数の要因で判断する

 「流産には原因が2つあります。一つは、母体側の病気が原因で起きる『不育症』。もう一つは、赤ちゃん側の染色体異常による『自然淘汰』です。流産は全妊娠の約15%の割合で起きますが、その80%は赤ちゃん側の染色体異常による自然淘汰とされています」(杉ウイメンズクリニック不育症研究所院長・杉 俊隆医師)

 女性が排卵した卵子の25%に染色体異常があり、その後、受精卵の染色体異常率は40%、着床前の時点で25%と、染色体異常の発生率は変化します。そのうちのいくつかは、自然淘汰されて吸収されます。

 着床して1週間たつと妊娠反応が出ますが、この時点での染色体異常率は10%。妊娠判明後に起きた自然淘汰のことを一般的に「流産」と呼びますが、着床前に細胞レベルで自然淘汰が起きる場合もあり、この場合、あまり本人に気づかれることはありません。

 「医学的に考えれば、着床前の自然淘汰と流産は意味的には同じ。淘汰された時期が遅いか早いかの違いだけなのです」(杉医師)

 流産の原因の多くは染色体異常ですが、なかには流産を起こしやすい何らかのリスク因子を持っている「不育症」の人もいます。厚労省の不育症研究班では、以下のように定義を試みました。

■2回以上の流産を繰り返した場合(3回以上は「習慣流産」と定義)
■妊娠10週以降で起きた原因不明の流産
※既に第一子がいても、たまたまリスクをくぐり抜けて出産に至った場合もある。また、産後に発症することもあるため、出産経験の有無は問わない。

 不育症と判断される材料の一つに、流産の回数があります。しかし、2回流産を繰り返した人の80~90%が、特に治療することもなく、その後の妊娠で無事に出産しています。そのため、回数だけで不育症だと診断するのではなく、他の要因を考えながら判断する必要があるとのこと。

 「例えば、20代の人が2回流産するのと、30代の人が2回流産するのとでは意味が全く違います。20代は、流産率が10%と流産しにくい年代なので、2回流産する確率は1%。これは、30代が3回流産する確率に匹敵します。ですから、20代の人が2回流産したら、不育症の検査をすべきだと考えます」(杉医師)

 流産した時期も重要です。妊娠10週(胎児の大きさは約30mm)を超えると自然淘汰による流産率が下がるため、自然淘汰ではなく不育症である可能性もある。胎児の心拍が見えた後の原因不明子宮内胎児死亡が一度でもあれば、年齢に限らず、何か流産を起こしやすい原因があると考えて、すぐに検査をすべきだと国際学会は定めています。

<次のページからの内容>

● 不育症の主なリスク因子は4つ。検査は、血液検査と子宮の画像診断で
● 不育症と診断された! 治療にかかる費用は?
● 不育症治療、保険が適用されるのは不育症患者全体の5%のみ
● 血液が固まらないよう管理しながら、2人の子どもを出産した経験者