産後に夫婦の関係が崩れてしまう“産後クライシス”。テレビ番組で報道されて話題になって以来、「まさにわが家がそうだった!」という人が後を絶たず、今や誰もが知る言葉になりつつある。しかし、この産後2年以内に起こりやすいという産後クライシスは、実は脳科学の観点から見ていくとすでに産前から兆候は始まっているのだという。なぜ産後クライシスが起こるのか、脳科学の視点から、専門家に解説してもらった。

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(4) 産後クライシスは子どもと父親の間で起きている ←今回はココ

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産後クライシスは、夫婦間の問題に留まらない

 産後の夫婦の問題だと思われている産後クライシスだが、脳科学者の加藤俊徳先生によると、根本は父親と子どもの関係にあるという。

 「産後クライシスは、お母さんとお父さんの間で起きているように思えますが、実際はお父さんと子どもの間で起こっているのです」

 「子どもとの関わり方が苦手な人というのも、どうしてもいます。もともと子ども嫌いな男性もいれば、子どもができて初めて『赤ちゃんを取り扱うのがこんなに怖いことなら、俺にはできない』ということに気付く人もいるんです」

 産後クライシスは、結局は女性が母親になっていくスピードに追いつけない男性側の焦りと、その男性のぎこちなさで子どもに接する姿に苛立ちを覚える妻のイライラが相まって生じてしまう。だからこそ、父親と子どもの関わり方が一番の根底にある問題だというのだ。

 それを改善するために、加藤先生は、母親が父親に経験する機会や時間を作ってあげることを勧めている。

 「父親が愛情をうまく出せないことを、母親のほうも『これはダメだ』と早々に決めつけないことが大事です。アスペルガーやADHDのような発達障害を抱えていて、それで子どもとうまくコミュニケーションできない父親もいます。でも、それは徐々に解決していくことができるのです。最初の段階で妻が決めつけないでチャンスをあげれば、クライシスにならずに済むこともあります」

「産後クライシスは、お母さんとお父さんの間で起きているように思えますが、実際はお父さんと子どもの間で起こっているのです」 (加藤俊徳先生)
「産後クライシスは、お母さんとお父さんの間で起きているように思えますが、実際はお父さんと子どもの間で起こっているのです」 (加藤俊徳先生)
<次のページからの内容>
● 既に産後クライシスに陥っている家庭は、どうしたらいい?
● 母親は努力して子どもとの関係性を構築している。父親も努力しないといけない
● 効力を発揮するのは「紙の写真のアルバム」
● 反抗期、子どもは父母どちらに愛着を持つかを決める
● あえての現状維持か、腰を据えての変革か
● 娘に家族思いの夫と結ばれてほしいならば、自ら“家族思いの父”たれ
● 産後クライシスを免れたとしても、次には“定年後クライシス”が待っている