赤ちゃんが小さく生まれたり、予定日よりも早く生まれたりして、「このハンデは一生続くの?」と不安になっているパパやママもいるかもしれません。元東京女子医科大学母子総合医療センター教授で、現杏林大学医学部小児科客員教授の楠田聡医師は、「3歳くらいになると、普通の体重で生まれた子や正期産で生まれた子との差は目立たなくなるので心配いりません」とアドバイスします。

 前回の乳幼児突然死症候群に引き続き、赤ちゃんが小さく生まれたり、早く生まれたりする原因や出産時のリスク、出生後の注意点、親の心構えなどについて、楠田医師に伺いました。

【年齢別特集 妊娠・育休中ママ・パパ向け】
(1) 原因不明の乳幼児突然死症候群 リスクの減らし方
(2) 低出生体重児と早産児 発達の遅れは個人差の範疇 ←今回はココ
(3) もし待機児童になったら? 保活の最新事情
(4) “早生まれ”の保活は不利? 保育園以外の選択肢も

 子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

低出生体重児と早産児の定義とは? 何が違う

 小さく生まれた赤ちゃんのことを医学用語では「低出生体重児」といいます。以前は標準的な赤ちゃんよりも機能が未熟という意味で「未熟児」と呼ばれていたこともありましたが、これは医学的な定義ではありません。

 標準体重(2500g以上4000g未満)で生まれた赤ちゃんに対して、文字通り体重が軽い場合(2500g未満)が「低出生体重児」、正期産(妊娠37週以降40週までの出産)よりも早く生まれた赤ちゃん(妊娠37週未満での出産)が「早産児」です。

 「低出生体重児と早産児はほぼ同じグループといえますが、イコールではありません」と楠田医師は話します。

 「例えば、妊娠37週以降に生まれても体重が2500g未満であれば低出生体重児となりますし、体重が2500g以上あっても妊娠37週未満で生まれれば早産児となります。

 また、この2つでは原因が異なります。低出生体重児の場合は赤ちゃんに原因がある場合と母体に原因がある場合が半分ずつくらいであるのに対し、早産は母体側の要因が原因となる場合が多いのです」

 低出生体重児になる場合の赤ちゃん側の主な原因は、染色体異常をはじめとする先天異常や臍帯の異常です。母体側の原因としては、妊娠前からあるいは妊娠20週までに高血圧となる妊娠高血圧症候群や高齢出産、多胎妊娠、極端な痩身のほか、喫煙が挙げられます。

 「妊娠中に喫煙すると子宮への血流が悪くなり、血液を通して赤ちゃんに運ばれる栄養が少なくなるため、赤ちゃんは100%の確率で小さくなります」と楠田医師。

 一方、早産の原因は子宮内に細菌が侵入して起こる子宮内感染症や、何の前触れもなく子宮口が開く子宮頸管無力症などにあり、赤ちゃんに原因があることはまれです。

 次ページでは、低体重や早産で生まれた場合、出産時にどんなリスクがあるかを見ていきます。

<次のページからの内容>
●低出生体重児は体温維持能力や哺乳力が低い
●体重や週数によってはNICUへの入院が必要
●体重が軽くなればなるほどリスクが高まる
●正期産に近い週数で生まれたほうがリスクは低い
●退院後に気を付けるべき点は?
●正期産で生まれた子との差はいつまで続く?
●保育園に通園する際に伝えておきたいこと