日本では告知や治療について親の判断が優先

―― はるかちゃんの闘病生活で、最も印象に残っていることは何でしょうか。

田川 入院中、面会時間が終わって私たちが帰ろうとすると、はるかが引き留めるために長い話を持ち出してくるんです。例えば、幼稚園の同じクラスの誰誰ちゃんはこんな子だ……というのを、クラスの人数分繰り返すわけです。1人でいるのは嫌なんだ、怖いんだと思いました。帰り際も「パパ、帰らないで!」と泣かれて、つらかったですね。

―― 治療のためとはいえ、親としてはたまらないですね。

田川 親は本来、子どものことを第一に考える立場です。はるかの代弁者として、もっと医師に要望を伝えてもよかったと今は思います。でも当時は治療が第一、主治医の指示に従うのが当たり前で、十分に親としての役を果たすことはできませんでした。

 ただ、子どもというのは案外たくましく、私たちが帰った後はお気に入りの看護師さんに頼ったり、年下の子の世話を焼いたりして、そうそう泣いてばかりもいなかったようです。後日それを聞いて、少しほっとしました。

―― 患児本人に、本当のことを話すべきでしょうか。

田川 大人が「子どものため」と思ってする行動は、大抵は逆効果なんですね。当時は本人にも、3歳年上の長女にも「はるかは頭の中にできたおできをやっつけようとしている」と伝えていましたが、真実を話すべきだったと思います。

 日本では告知や治療について、子ども本人ではなく親の判断が優先されます。一方、英国は「子どもファースト」で、6歳を過ぎて年相応に理解力が育っている場合は、本人に告知します。子ども支援の専門家が人形を使って、薬はどんな風に効くか、点滴はどうやってするかなど、病気を分かりやすく説明することもあります。子どもなりに理解し、どうしたいか考えるよう促すのです。