優秀な人が一部なら、その優秀さはたまたま。企業で育てる仕組みがあるか

—— ホワイト企業になると、どんないいことがあるのでしょうか。

大川原 このあと10~20年は、採用では売り手市場が続くと考えています。人手不足が深刻になっており、ブラック企業からは人の流出が止まらないでしょう。どう人を確保するのか、本気で考えるべき時代になってきています。

 ここ1~2年の間に転職活動をした人なら分かるかもしれませんが、だいぶ、転職の条件がよくなっているのではないでしょうか。例えば子育てが一段落した女性への採用ニーズも増えています。

 採用に関して言えば、経営者は「できるだけ優秀な人をとりたい」と考えるでしょう。そのときにベースになるのが、社内に既にいる「優秀な人」です。でも、その優秀な人がほんの一握りの場合、その優秀者は「たまたま、その人の素質がよくて、その人を運よくとることができた」ということにすぎません。他の大勢が優秀でないと感じるならば、それは会社が「優秀な人を育てることができていない」ということです。優秀な人を採用することにこだわるよりも、優秀な人をどう育てるのか、ということに注力すべきです。

 また、人件費を削って利益を出すというブラック的経営ではなく、従業員を大事にするホワイト経営をすれば、個々の従業員のモチベーションが上がり、生産性の向上も期待できます。ブラックな経営は離職率が高くなり、売上高の減少や、社員教育に費用がかかったりと、逸失利益が生じることにもつながります。

 財務的な観点からも、ホワイト的経営のほうが、資本主義的な合理性に合致している、ということを広めたいと思っています。

ホワイト経営をすれば、個々の従業員のモチベーションが上がり、生産性の向上も期待できる
ホワイト経営をすれば、個々の従業員のモチベーションが上がり、生産性の向上も期待できる