日経DUALの創刊から4年。これまでウェブでよく読まれた人気記事や注目連載陣によるコラムを全120ページにたっぷりと詰め込んだリアルマガジン『日経DUAL Special!』が登場しました! 子どもの教育、英語、学力、受験、お金、家事代行、保育園、学童、しつけ……など、子育て中のママ・パパが気になるテーマについて、それぞれの分野の専門家や企業に取材した骨太な記事ばかりです。
 今回、DUAL編集長の羽生、『日経DUAL Special!』をまとめた編集・片野が、各特集の記者と共に特集の見どころを振り返ります。第1回は「“教えない”早期教育」特集です。

■第2回の記事
ワンオペ育児から抜け出したい…諦めない・交渉する

■第3回の記事
子どもの英語教育どうする?スクール選び、親の関わり

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● 意欲を伸ばす “教えない”早期教育
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● 小島慶子さん、中田敦彦さん、眞鍋かをりさん、魔裟斗さん&矢沢心さんの連載

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何か今やっておくべきことがあるのでは

羽生(以下、羽) 『日経DUAL Special!』の巻頭特集は、ズバリ、「地頭が良くなる 意欲を伸ばす “教えない”早期教育」です。気になるキーワードがいきなり来ましたね! 早期教育については、まだ子どもが小さい片野さんがずっと編集会議で企画を提案してましたよね。

片野(以下、片) はい、ふにゃふにゃの赤ちゃんを目の前にしたときから、この柔らかく成長していくだけの脳に一体どんなことをしてあげられるの?と思っていました。どこか特別な所に通わせたり特別なものを買ったりしなくてはいけないなら、忙しい共働きには多分難しいし、かといって何もしないのも……何か今やっておくべきことがあるのでは、と。共に取材を担当してくれた小林記者も当時3歳児のママで、同じ気持ちでした。

小林(以下、小) 子どもが目の前でぐんぐん成長していろんなことを吸収していくのを見ていると、焦りにも似た感情が湧いてくる自分がいました。習い事を始める年はどんどん低年齢化しているし、乳幼児向け教材もたくさん存在しているし。「◯歳ごろまでに◯◯は始めておいたほうがいい」みたいな言葉はちまたにあふれていますよね。この時期に本当に必要なことって何なんだろうな、知りたいなと思っていました。

 そこで脳科学、発達心理学、モンテッソーリ教育、脳神経外科医という4つの分野で専門家たちを訪ね、話を聞くうちに浮かび上がったのが、「教えない」というキーワードでしたね。皆さん、口をそろえて「“教える”よりも、子どもが興味あることを自由に楽しむ環境をつくってあげることが大切」と言うんです。

 小学校に上がる前でも、家庭や保育園・幼稚園で、ひらがなや数字をはりきって教えてしまいますもんね……。

 脳科学分野の権威である小泉英明さんは、「小さいうちにそういった“不自然な教育”に時間を取られて本来伸ばすべきことがおろそかになる」という状況を懸念していました。知育よりも、子どもの意欲を伸ばすことのほうがはるかに大切で、脳が内側から外側へと進化した人類の進化の順に照らし合わせ、「意欲」や「やる気」が関わる脳の内側をまず鍛えるのが一番なんだそうです

 それを実現できるのが自然界で、先生は「子どもを野原に放て」とアドバイスしています。「野原に放て」はその後しばらく、私たちの間で流行語になっていましたね(笑)。

 「光、音、様々な形や色、感触――自然は、意図しない刺激に満ちています。一方、人間が与える教育は、意識上の言語で作られたもの。良い教育をしているつもりでも知らず知らずのうちに意識下への刺激がカットされて、刺激が狭められてしまう危険性があるのです」

 大人が「よかれ」と思って与えるよりも、はるかに高度なことを子どもの脳は自分でやろうとしています。「子どもが自分で自発的に学ぶ力を邪魔しないことが大切です」(『日経DUAL Special!』P16)

 なんと。大人がよかれと思って「教えよう」とすることが、子どもには邪魔になるかもしれないとは。

 「子どもは自然の中で遊ばせろ」とは昔からよく言われますが、五感に様々な刺激が与えられ、必然的にあらゆる部分が鍛えられる自然は最強のようです。その根拠を脳科学という側面から説き明かしてもらえたのでふに落ちました。それに、先生に話を聞いたおかげで、そんなに頑張って色々教えなくてもいいんだ、と肩の力が抜けた気がします。「せめて子どもの邪魔はしないようにしよう」くらいに考えが変わりました。

 モンテッソーリ教育の天野珠子先生も、「子どもが何かに集中しているときは自分で十分にやり切ったと思うまでそっとしておきます。上手ね、と話しかける必要はありません。子どもは自分がやりたいからやっているのです」と話します。これを聞いて「あ、私、邪魔してる……」と反省しました。忙しいときは途中でも「もう、おしまい」と切り上げようとしたり、逆に忙しくないときは「よくできたね~」などと要らぬ応援を送っていたりして。それから、親の姿勢に対するアドバイスとして、「教える」のでなく「環境を整えるだけ」という先生の言葉も胸に刺さりました。

 モンテッソーリ教育では、子どもを観察することでその子の発達に適した「敏感期」を捉え、適切な時期に環境を整えることで発達を援助していきます。/ 天野さんは、大切なのは、親は「教える」のではなく、「環境を整えるだけ」と強調します。「例えば、忘れ物が多い子なら、園に持っていくものを子どもが見て分かる絵入りリストにして玄関に置いておく。親が毎朝、リストに突き合わせている姿を見せていれば、やがて自分でチェックできるようになります。最初にしっかり環境を整えたら、親は少しずつ手を抜けるようにもなるのです」(『日経DUAL Special!』P18~19))

子どもの「どうして?」にどう答える

 取材後、自分の子育てで実践していることはありますか?

 発達心理学・認知心理学・保育学が専門の内田伸子先生のアドバイスを取り入れています。「お風呂ではなぜ手が軽くなるの?」などという子どもの「どうして?」に、親が即座に理由を説明する行為は子どもの考える貴重な機会を奪っている、と。これは衝撃的でした。説明してあげることが子どものためになると思い込み、分かりやすい言葉を探して一生懸命説明していたのに……。でも今は「どうしてだろうね、どうしてだと思う?」とまず返すように心がけています。といっても、忙しかったりイライラしたりしていると、そんな余裕もなく即答してしまうこともあり、ハッとして反省することもしばしばですが。

 「いい考えだね、よく考えたね」と共感を持って受け止めると、自分でどんどん考えようとする。この習慣は、“考える力”を家庭で育てるための良い方法です」(『日経DUAL Special!』P18)

 「よく考えたね」と言うようにすると、子どもが自分で考えようとしてくるのが分かりますよね。

 時にはとても面白い発想をして、親を笑わせてくれることもあります。ただ、娘も私と同様、疲れていると「考えて分からないから聞いてるのに!」と怒り出すことも。

 それ、あります、あります(笑)。私は脳神経外科医の林成之先生に「脳は情報を受け取ると、情報に『好き』『嫌い』『興味がある』などのレッテルを貼り、プラスのレッテルに分類された情報は理解力や思考力を引き出す」と聞いて以来、子どもが興味を持ったことに「へぇ~」「そうなんだ!」と共感することを今まで以上に意識するようになりました。そしたら、道に落ちている枯葉一枚に対してもワクワク思えてきて、子どもと一緒に拾って持ち帰ったりします。うちの子、なぜか色づいた葉っぱを見たらテンションが上がるんですよ。

 0~3歳に親がすべきことは、子どもがうれしくなるよう「気持ちを込めて」会話すること。(中略)座り込んで砂をいじり出す子どもには「すごいね」「なるほど」という言葉で共感してあげることが大切。「やめて」「汚い」といった、「知りたい」本能を否定的な言葉で遮ることは一番良くない。(中略)親が気持ちの込もった言葉をたくさんかけ、たっぷり愛情をかけることで、子どもの「好きになる力」のベースを育てられる。(『日経DUAL Special!』P20)

 本特集の取材を通して知った「脳は研究対象としてまだまだ謎に満ちている」という事実は新鮮でした。

 人間の脳はコンピューターなんて比較にならないくらい高度で複雑に機能しているんですね。人間ってすごいんですね。

 あまりの謎の深さに、脳に関する本を読んだり、取材したりするにつれ、ゴールの見えない巨大な迷路か宇宙に迷い込んでいくような気がしてくらくらしました。で、改めて、子どもの小さな頭をじっと見下ろし「この中にそんなすごいものが詰まっていて、内部で日々目まぐるしく変化が起きているのだな」と感慨深く見つめた瞬間もありました。

 小さいうちは機会のある限り、大自然のキャンプや田植え、稲刈り、泥んこ遊び、雪遊びなどなどたくさん子どもと遊ぼうと思いました。普段の保育園からの帰り道でも、気になる石や土、葉っぱがあったら足を止め、雨の日は水たまりに入ることを楽しみ、時間が許す限り遊んでいこう!と言ってみたいです。子どもの可能性を信じるお父さん、お母さんにぜひ読んでほしい特集ですね。

日経DUALがついに雑誌に!
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(イメージカット/鈴木愛子)