小型ゲーム機やスマホの登場で、子どもたちの視力低下が問題となる中、みなさんは子どもの学習環境における照明に対して、どのくらい注意を払っていますか? そして、リビング学習が広がった昨今、実は子どもの目はますます危険にさらされているといいます。そこで今回は、住環境と照明環境の専門家に、どのように子どもの目を守ればいいか、お話をうかがってきました。

「子供の学習にベストな明かりとは?」後編はこちら。

(写真提供=積水ハウス株式会社)
(写真提供=積水ハウス株式会社)

スマホやゲーム機以外にも、住環境が視力低下の原因に?

 コンタクトレンズや眼鏡、レーシックなど何かしらの視力矯正をしている大人が多数派を占めていますが、同時に子どもの視力低下も年々進んでいます。そんな中、私たち親はどのように子どもの目を守っていけばいいのか、照明環境や住環境について研究をしている、積水ハウス住生活研究所長の河崎由美子さんと、主任の後藤浩一さんにお話を聞きました。

DUAL(以下、--)文部科学省の調査によれば、小学生の近視が年を追って増えています。やはり現代の子どもたちの視力は低下しているのでしょうか?

 「DUAL読者の皆さんが子どものころ、テレビを見る時は部屋を明るくして離れて見ましょう、と言われて育ったのではないでしょうか。それを守っていれば、子どものうちから著しく視力が低下することはあまりなかったと思います。それが最近は、スマホ画面やゲーム機などの普及で近くを見るようになり、しかも目に入る光束の量はテレビや紙よりはるかに多いため、視力が悪くなる原因は増えていると言えますね。勉強や読書は、紙に光が当たってその反射を見るのですが、ゲームやスマホは光源そのものを見るため、刺激の量は桁違いです。画面を見ていると瞬きが減り、疲労感も増えるので、ゲームやスマホは視力低下と無関係ではないと思います。

 ゲームやスマホが子どもの視力に影響を及ぼす以外に、住環境の変化も一因になっています。昔は小学校に上がると学習机を買ってもらって、付属のデスクライトを使って学習する場合が多かったですね。ところが今は間取り的に子ども部屋を作る余裕がない、親の目の届くところで勉強させたいなどの理由から、リビング学習をする子どもが増えています。もちろんリビング学習自体はまったく問題ありませんが、気をつけてほしいのが明るさ。ほとんどのご家庭のリビングは、学習をする上で圧倒的に照度が足りていないのです

 特に最近は、間接照明を使った家が増えて、家全体の照度がおさえられている傾向があります。赤みのある白熱灯はゆったりと過ごす分には落ち着きますが、学習に必要な照度となると話は別。JISでは750ルクス必要とされていますが、足りていない場合がほとんどです」。

--暗い環境下で作業していると視力の低下しそうですよね。学習効果という面でも問題があるようです。明るさと記憶力には相関関係があると聞いたら、ますます見過ごすわけにはいきません。

 「当たり前ですが、明るい場所では文字がよりくっきりと見えますよね。きちんと識別できると、脳裏にしっかり映るので、記憶にも残りやすいということは実感としても理解できることと思います。目で見て覚えることも、記憶を作る上で大事なこと。このような観点からも、子どもが学習する際のデスクライトはマストなんですね

--これは、まだ勉強などをしない赤ちゃん期にもあてはまることだそうです。五感が発達する赤ちゃん期にはいろんな外部刺激を浴びて、器官や能力を発達させていきます。その中で灯りや色彩はとても大切な要素。ちゃんとした光の中で正しい色を見る、色鮮やかな体験をすることで、観察する力が育っていくんですね。

河崎由美子さん<br>積水ハウス株式会社住生活研究所長(2018年8月1日より現職)。1987年積水ハウス入社。商品開発部、ハートフル生活研究所、生涯住宅研究所などを経て現職へ。暮らしについて研究を続けてきた、住生活提案のプロフェッショナル。一級建築士。キッズデザイン協議会理事。長男のアメリカ大学進学に伴い卒母。
河崎由美子さん
積水ハウス株式会社住生活研究所長(2018年8月1日より現職)。1987年積水ハウス入社。商品開発部、ハートフル生活研究所、生涯住宅研究所などを経て現職へ。暮らしについて研究を続けてきた、住生活提案のプロフェッショナル。一級建築士。キッズデザイン協議会理事。長男のアメリカ大学進学に伴い卒母。