保育業界で少数派の男性保育士。保育は「女性のもの」という業界の価値観もあり、雇用はなかなか進みません。男性のシッターや保育士による幼い子どもへのわいせつ事件も、男性保育士の雇用が進まない原因の1つになっているようです。男性保育者同士の交流及び学習の場である東京男性保育者連絡会の事務局長で、東京都板橋区の認可保育園わかたけかなえ保育園の園長である山本慎介さんに、現状と課題を聞きました。

家族を食べさせられない…

日経DUAL編集部(以下、――) 保育士全体の登録者のうち、男性の数は約5%というデータもあります(厚生労働省)。男性保育士が少ないのはなぜでしょうか。

山本慎介さん(以下、敬称略) 大きいのは給与水準です。ほかの業界に比べて保育士の給与水準は低く、なりたいと思う男性が少ないです。「一家の大黒柱」という考え方もまた「男性らしさ」を求められた結果だと思いますが、「家族を食べさせられない」と考えてしまう男性が多いです。

 受け入れる事業者側の問題もあります。男性保育士を雇用したことがない事業者がまだまだ多くあります。「男性用の更衣室がない」「女性たちでうまくやっている職場を乱すのではないか」「女児のおむつ替えができないのではないか」といった理由から雇用に消極的です。ただ、いずれも園が少し努力すれば解決できる問題ばかりです。根本にあるのは男性保育士を雇用したことがないための「漠然とした不安」です。ここが変わらない限り、男性保育士が増えていくのは難しいかもしれません。

―― 男性保育士を見かける機会が増えているように思います。

山本 母親が働き、父親が家事、という家族の形態も珍しくない昨今では、園に男性保育士がいても違和感を持たない保護者も多いですよね。男性保育士の雇用に積極的な園もあります。私が園長を務めるわかたけかなえ保育園も、保育士16人中男性は4人と25%を占めています。

 ただ、都市部では待機児童の問題が未解決で、各自治体は園を次々と開設し、保育士不足が発生しています。女性だけでは足りないことを理由に男性保育士を雇用しているという園も少なからずあるのが実情です。

 根本的には、業界全体で「保育は女性がするもの」という古い考えを変えていかないといけないと思います。男性保育士の増加が子どもの発育にとっても、保護者にとっても、保育園業界にとっても望ましいものであることを、これからも訴えていきたいです。

―― 男性保育士の増加が子どもや保護者、保育園業界にとって望ましいという理由をお聞かせください。