世界最大のビジネス特化型SNSを展開しているLinkedIn(以下、リンクトイン)が、18~65歳の日本女性約750名を対象に、「日本女性の仕事と生活に関する意識調査」を実施しました。そこで明らかになったのは、家庭と仕事の両方の責任を抱える日本女性の悩みとシビアな現状、そして4分の1が誰にも相談していないという結果でした。そこで、多くの女性の相談にのってきた人気コラムニストであり作詞家、ラジオパーソナリティーとしても活躍するジェーン・スーさんと、リンクトイン代表の村上臣さんに、働く女性たちのモヤモヤを解消するために、今すべきことやその先の未来について語り合っていただきました。

多くの女性が悩みを思い違いしている現実

村上 今回の調査で分かったのは、やはり、日本女性は家事における負荷が大きく、仕事と家庭生活のバランスがキャリアの障壁になっているということ。他国と比べても大きい日本のジェンダー・ギャップの課題が、改めて浮き彫りになりました。加えて、4分の1の女性が、仕事と人生について相談することにためらいを感じていると。モヤモヤを抱え、悶々としているけれど、仕方がないと思ってしまっている、女性が孤立しているのではないかという懸念があります。

<b>村上 臣</b>さん<br>リンクトイン日本代表<br>青山学院大学在学中に仲間とともに有限会社「電脳隊」を設立。その後統合したピー・アイ・エムとヤフーの合併に伴い、2000年にヤフーに入社。一度退職した後、2012年からヤフーの執行役員兼CMOとして、モバイル事業の企画戦略を担当。2017年にリンクトインの日本代表に就任。
村上 臣さん
リンクトイン日本代表
青山学院大学在学中に仲間とともに有限会社「電脳隊」を設立。その後統合したピー・アイ・エムとヤフーの合併に伴い、2000年にヤフーに入社。一度退職した後、2012年からヤフーの執行役員兼CMOとして、モバイル事業の企画戦略を担当。2017年にリンクトインの日本代表に就任。

ジェーン・スー(敬称略。以下、スー) 自分が抱えている問題を上手に言語化するには練習が必要ですからね。そもそも、自分が置かれている状況を客観的に把握できている人が少ないと思います。個人的な悩みだと思っていることが、実は自分の能力の問題じゃなくて、バグった社会のしわ寄せだということとか。

日頃ラジオ番組で悩み相談を受けている私の感覚では、多くの人がそこを思い違いしているように感じています。女性の場合は、社会人、母、妻、娘、など期待される役割が多いので、特にそうかもしれませんね。まずは考え方を変えたほうが、気持ちが楽になるかも。そうでないと、全員がただの能力不足になっちゃうんです。そんなことはないのに。

<b>ジェーン・スー</b>さん<br>作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、Podcastオリジナル番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』でMCを務める。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。近著は『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『女のお悩み動物園』(小学館)。
ジェーン・スーさん
作詞家、コラムニスト、ラジオパーソナリティー。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、Podcastオリジナル番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』でMCを務める。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。近著は『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『女のお悩み動物園』(小学館)。

村上 社会が持っているバイアスとか、社会が原因で起こる問題を女性が個人で抱え込んでしまう、個人のせいにされちゃうということですよね。

スー おっしゃる通りです。と同時に、「ひかえめな女性」が好まれるような、つまり女性が欲望を持つこと自体を良しとしない社会の風潮が長く続いたこともあり、いまだ女性が「こういう風になりたい」、「ああいう風にしたい」と欲望をはっきり口に出すと、欲張りと思われてしまうのではという恐れもある。

でも、それはあなたの問題じゃなくて、願望を口にすると、欲張りだと思われるような社会の問題なのではないか? という話をすると、ああそうかって。日本は、まずそうした呪縛を解く教育から始めることが重要なんじゃないかなと思いますね。

村上 それって、ジェンダー平等が進んでいると思われているアメリカでさえも、例えばアグレッシブという言葉は男性に対しては誉め言葉になのに、女性に向けるとネガティブにとられるといった感じで、まだ根深く残っているところなんですよね。ジェンダー・ギャップ121位の日本はなおさら。先は長そうです。

女性が家事と仕事の両方の負担を抱えている、という今回の調査結果がヤフーニュースに掲載された時も、「そんなの家庭の問題でしょ」っていうコメントがものすごく多くて僕はびっくりしたんですよね。家庭の問題に見えるけれど、全然違う。男は青、女はピンク、みたいなところから始まっているジェンダーバイアスを、知らず知らずのうちにみんなが抱えているというところを我々も訴えていきたいのです。