世界ではドイツのアンゲラ・メルケル首相、フィンランドのサンナ・マリン首相、台湾の蔡英文総統ら、政治分野で多くの女性リーダーが活躍しています。米国は次期政権で、カマラ・ハリス氏が同国で女性初の副大統領に就くことになります。

一方、日本では女性議員の割合は衆議院が9.9%、参議院が22.9%で、191カ国中165位(2020年1月時点)と世界の中でも低い水準です。こうした状況を打開し、女の子が「総理大臣になりたい」という夢を持ち、かなえていく社会にするにはどうすればよいのでしょうか。「ジェンダーと政治」を専門とする、東海大学教授の辻由希さんに聞きました。

 「将来子どもが就きたい職業ランキングなどの上位に、政治家が入ってくることはありません。現在の日本では、女の子だけではなく男の子でも『政治家になりたい』という子はほとんどいないでしょう」と辻さん。その理由の一つとして、「政治的社会化」がスムーズに進まないことが考えられると言います。

 「政治的社会化とは、人間が成長する過程で周囲から影響を受けて、政治に対する自分なりの価値観・考え方を身につけたり、投票に行くといった行動様式を学習したりすることを指します。このプロセスでは、家庭や地域、学校など自分が所属する組織からの影響を大きく受けますが、日本では子どもが日常的に接する人たちとの間で政治のことが話題にのぼることは少なく、政治は『自分とは関係のない世界の話』になりがちです」

 辻さんによると、米国では1984年にジェラルディン・フェラーロ氏が女性で初めて民主党の副大統領候補になった際、メディアで取り上げられることでロールモデル効果が生まれ、10代の女子の政治への関心が上昇したとの報告があるといいます。ただしメディア報道が直接影響を与えたわけではなく、女性の有力候補を取り上げるメディア報道を見て、女子がいる家庭で政治に関する会話が増え、それが結果的に政治への関心の上昇につながったと指摘されています。

 「家族でテレビや新聞などメディアに登場する女性政治家の姿を見て、『こうやって活躍ができるのはすてきなことだね』『政治家は社会に大きな影響を与えられる仕事だね』と話し合う機会が増えれば、女性が政治の世界で活躍することをポジティブにとらえる子どもが増えるのではないでしょうか」

 では、子どもたちのロールモデルとなる女性の政治家を増やすために、実際どのようなことができるのでしょう。

米新政権発足へ。次期副大統領のカマラ・ハリス氏(写真:AP/アフロ)
米新政権発足へ。次期副大統領のカマラ・ハリス氏(写真:AP/アフロ)