新型コロナウイルスによる休校や外出自粛の影響もあり、動画視聴やゲーム、オンライン学習など、子どもがインターネットを利用する機会が増えています。学校からタブレットが配布されたり、子ども自身のスマートフォンやパソコンを持っていたりする家庭もあるのではないでしょうか?そこで気になるのが、子どものインターネット利用をめぐる様々な問題。子どもが安全にインターネットを利用するためにはどうすればいいか、ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんにお話を伺いました。

コロナ禍で子どものインターネット利用が増加

──最近、子どもがインターネットを利用する機会が増えているといいますが、本当なのでしょうか?

高橋暁子さん(以下、敬称略) コロナ禍で全世界的にも全年代的にもインターネット利用の長時間化が指摘されています。これまでインターネット利用を禁止していたけれど、学校に行けなくてかわいそうだからと解禁したとか、友達と遊ぶことができないからゲーム内でのコミュニケーションは許すようになった、という親の声が聞かれています。

 とくに、小学生男子の間では、オンラインゲーム内で音声のメッセージをやり取りできるボイスチャットが流行っています。その中でなら自由に話をできるし、ゲーム内で待ち合わせして一緒に遊べるから楽しい、と話している男の子もいました。

ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さん「コロナ禍で子どものインターネット利用が一気に進んでしまい、様々なトラブルにつながっています」
ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さん「コロナ禍で子どものインターネット利用が一気に進んでしまい、様々なトラブルにつながっています」

 思った以上にコロナ禍で子どものインターネット利用が一気に進んでしまい、もともとネット依存傾向であった子どもはますます依存傾向になったり、これまで利用しなかったものにも手を出すようになったりして、様々なトラブルにつながっています。

 2021年4月に発表された、東京都による「家庭における青少年のスマートフォン等の利用等に関する調査」でも、約5割がコロナ禍で子どものインターネットの利用する時間が増えたと回答しました。さらに、小学校低学年の約1割が「トラブルが増えた」と回答しています。

コロナの影響による子どものインターネット利用の変化を聞いたところ、約5割が「利用する時間が増えた」という。「家庭における青少年のスマートフォン等の利用等に関する調査」(東京都、2021年)より
コロナの影響による子どものインターネット利用の変化を聞いたところ、約5割が「利用する時間が増えた」という。「家庭における青少年のスマートフォン等の利用等に関する調査」(東京都、2021年)より

小学生と分かると、DMやコメントで誘い出されてしまう

──子どものインターネット利用において、どんなドラブルが起きているのでしょうか?

高橋 同じ東京都の調査によると、「注意しても、長時間使用するようになった」が約6割で一番多く、「アプリやゲームの購入・課金」「メールやSNSで友達等とトラブル」と続きます。なかには、「ネット上で知り合った人と会う約束をしたり、実際に会うなどしていた」「下着姿や裸の写真・動画を撮ったり送ったりしていた」との回答もありました。

「家庭における青少年のスマートフォン等の利用等に関する調査」(東京都、2021年)より
「家庭における青少年のスマートフォン等の利用等に関する調査」(東京都、2021年)より

 コロナ禍でネットが子どもの居場所になってしまった結果、ネットコミュニケーションによる問題が起きています。例えば、ネット上の相談相手やコミュニケーション相手に誘い出されてしまう、小学生ということがわかってしまい、DM(ダイレクトメッセージ)やコメントで誘い出されてしまう、ということがかなり起きています。

 若者に人気の「Twitter」や「Instagram」、「TikTok(ティックトック)」などが悪用され、子どもが被害に合う事件も相次いでいます。例えば「TikTok」に投稿をしていたら、小学生だと目をつけられて、「かわいいね」などとコメントをもらっているうちに親しくなり、「会ってくれないと家の前で死ぬ」と脅されたため、実際に会ってしまい性被害を受けた小学5年生の女の子もいます。ほかにも、他県まで誘い出されて誘拐状態になったり、下着姿や裸の写真を送るように要求されたりする事件も起きています。

 特に、小学生くらいの女の子は「かわいいね」「好きだよ」と言われるとその気になってしまったり、「お母さんとケンカした」などと投稿していたら、「相談に乗ってあげる」とメッセージをもらい、やり取りしているうちにいい人だと信じて会いに行ってしまったりなど、悪い人に誘い出されてしまいます。

 また、インターネット利用の時間が長くなった結果、視力低下や肥満の子が増えていることも懸念されています。文部科学省「2020年度(令和2年度)学校保健統計調査」によると、視力が1.0未満の割合が小・中学校で過去最多を更新、肥満傾向の児童も小・中学校の全学年で前年度より上昇しています。日光を浴びたり、一定時間近くを見たら遠くも見るようにすると近視を防げると言われているのですが、外に出なくなった結果視力が悪化する、体を動かさずに家でゲームをしていて肥満になってしまう、ということがおきています。

自身も小学生の子どもを持つ高橋さん。「多くの保護者が情報リテラシー教育を受けていない世代。まずは子どもが利用するサービスのリスクを知った上で、子どもに使わせることが大切」
自身も小学生の子どもを持つ高橋さん。「多くの保護者が情報リテラシー教育を受けていない世代。まずは子どもが利用するサービスのリスクを知った上で、子どもに使わせることが大切」