誰もが自分の将来の夢を語ることができるように。ICT教育が可能性を広げる

 「プログラミングの学習を通して、自分が成長したな、変わったなと感じることはありますか?」

 そんな質問に「自分ではよく分かりません」とはにかんで答えた竹内君。でも、「ボッチャのアプリが完成したら次は何をしたいですか?」という質問には、前のめりになってこんなふうに答えました。

 「定期テストの予定を把握して、簡単に勉強計画が立てられるようなアプリができたら便利だな、と思っていて。そういうアプリを作ってみたいと思っています」

 さらに、「将来の夢は?」には「IT企業でプログラマーになること」とはっきりとした声で即答してくれました。その様子をほほえんで見ていた白石先生は、後でこう補足してくれました。

 「彼は来年中学3年になる。進路のことを話すことになります。そのとき、どんな道を選ぶかは分かりませんが、確実に現在の体験は、自分の将来を見つめる一つのツールになると思います。高校で、自分がどういう勉強をしたいのか、大学に進みたいのか、その先はどうしたいのか。こうしたICT教育を通じた経験が、彼の一つの糧になってくれたらと願っています」

 現在の小・中学生は、幼少期からデジタルネーティブ世代。親世代が経験してきたのとはまるで異なる流れの中で、学習スタイルを身に付け、自分たちの道を進んでいく必要があります。子どもたちが大人になるころには、現在は存在しない職業のほうが多いのではないか、ともいわれるAI時代で、自ら食べていける人材になるためには、今から親が未経験のICT教育を通して、論理的思考を身に付けるベースを作っていく必要があります。

 そして、多種多様な環境の中で成長する子どもたちにとって、IT技術が持つサポートが、学びたい気持ちや可能性を大きく羽ばたかせてくれるものである、ということも、白石先生や竹内君たちの様子から垣間見ることができました。誰もが、笑顔で学び続けることができるツールとして、iPadのようなデジタルツールは今後の教育に欠くことができないものになるのかもしれません。

(文・写真/玉居子泰子)