iPadの書く、読む、伝えるのサポートが、将来につながる学習を生む

 ICT教育の良さは、教育を受ける子どもたちの状況を選ばないというところにあります。例えば、都市部にいなくても、高額な塾やプログラミング教室に通えなくても、デバイスさえ持っていれば、無料のアプリケーションを使ってプログラミング教育は受けられます。

 さらに、特別支援学校に通う児童・生徒にとってもまさに、iPadなどのタブレットを使った学習は、成長を促す大きなツールになると白石先生は考えています。

 白石先生が、特別支援学校の中でiPadなどのデバイスを使ったICT教育に積極的に力を入れている理由。それは主に次の3つに集約されます。

  1. 持ち運びのしやすさ、手軽さ
  2. シンプルで直感的な操作
  3. 様々な障害に対応したアクセシビリティ機能

 「学校の授業にノートパソコンを持ち込むのは大変です。その点、iPadなどのタブレットなら、車椅子で通う生徒にとっても持ち運びに負担にならず、教科書やノートを大量に持つよりもはるかに軽く便利です。またデジタルネーティブな子どもたちにとって、感覚的に操作ができるiPadは大人が考えている以上に、楽に動かせる便利さがあります。実際、本校ではかなりの数の生徒が、授業にiPadを持ち込んで学習しています」

 さらにiPadをはじめとするタブレットのテクノロジーが持つ「書く」「読む」「伝える」などのアクセシビリティ機能が児童や生徒たちにとって非常に助けになるとも言います。

 「生徒の中には筆圧が弱く、鉛筆を握れない子もいます。あるいは字は書けても答案用紙にあるような小さなスペースに、細かい文字を入れることが難しいという場合もある。それが、iPadの画面上では簡単に手書き文字を入れることができます。狭いマスはフリック操作で拡大して文字を書き込んだり、逆に大きく書いた文字を縮小してはめ込む、ということを、誰が教えなくても彼らは自分たちで考え出してやっているのです。こうして、今まですべてを代筆してもらっていたことが自分でノートをとり学習できるようになったということは画期的なことです。

 これによって大学進学を考えている生徒たちにとっても可能性が出てきます。入試の際にデバイスを持ち込んだ受験が可能であれば、自分の力で解答を書き受験ができるようになるのです」(白石先生)

 他にも音声入力や、アプリを使えば、聴覚障がい、視覚障がいを持っている生徒にとっても読む、書く、聞く、発表するといったことが可能になります。そして、さらには、こうしたデバイスを使ったサポートやプログラミングの授業が、子どもたちの思考力や、将来への目標につながっていく、と白石先生は考えています。