最近話題のプログラミング。2012年度からは中学校で必修になり、2020年度には小学校でも必修科目になることが決まっています。でも、実際のところ、親のほとんどはプログラミング教育を受けずに育った世代。結局授業で何が学べるの? どう将来に役立つの? と疑問を持っている人もいるかもしれません。

 筑波大学附属桐が丘特別支援学校では、現在、放課後の課外授業としてICT同好会を開いています。デジタル教育に興味を持った中学生たちが集い、授業外でプログラミングの講義を受けています。特別支援学校でのICT教育が、子どもたちにどんな影響を与えているのか、その教室をのぞいてみました。

ICT教育を通して、特別支援学校の生徒に可能性を与えたい

 午後1時半。授業を終えた中学生たちが教室に入ってきました。友達同士でふざけ合いながら、取材に訪れた私たちを見て、少し恥ずかしそうに挨拶をしてくれます。男女合わせて十数名ほどが、大きな電動車椅子を操作して部屋に入ってきました。

 筑波大学附属桐が丘特別支援学校で、毎週水曜日の放課後に行われるこの課外教室は「ICT同好会」と呼ばれています。年に何度か生徒からの希望を募り、スポーツやゲームなど、テーマを決めて実施するクラブ活動のようなもの。近年では、デジタルツールを使った授業が人気で、生徒たちもこの日を楽しみにしているそう。

筑波大学附属桐が丘特別支援学校の白石利夫教諭。2016年2月に、iBook『肢体不自由児のiPadの利用』を上梓
筑波大学附属桐が丘特別支援学校の白石利夫教諭。2016年2月に、iBook『肢体不自由児のiPadの利用』を上梓

 同好会を主催しているのは、同校中学部教諭である白石利夫先生。白石先生は授業を通して、肢体に不自由がある生徒たちがiPadを利用するメリットに手応えを感じ、数年前から大学と共同研究を続けてきました。

 「iPadのようなデバイス端末が出てきたことで、子どもたちが非常に手軽に、ITについて学ぶ機会が持てるようになりました。これはどの子どもにもいえることですが、特に本校のように特別支援学校に通う生徒には画期的なことです。十数年前には考えられなかった、教育の機会が、広がったと思っています」(白石先生)

 今やデジタルネーティブ、と呼ばれる世代の子どもたちが、AIの時代を生きていくために、ICT教育は必須といわれています。そしてその教育を受けるのは、特別な環境にいる子どもたちだけでなく、すべての児童・生徒に開かれたものでなくてはならない。そんな信念の下、白石先生はテクノロジーを使った教育を行うADE(Apple Distinguished Educator)として、iPadなどのデバイスや、アプリケーションを使って、ICT教育の普及に努めています。

 さて、次のページから早速、同好会でどんなことをしているのか見ていきましょう。