11月に行われた米国の大統領選で同国史上初の女性副大統領が誕生し、閣僚などの人事を通して多様性重視の姿勢を打ち出す次期政権に注目が集まっています。3年前に妻の駐在に帯同し、ニュージャージー州で2人の子どもを育てる「駐夫(ちゅうおっと)」の小西一禎さんが、現地の様子をリポートします。

 米国のジョー・バイデン次期大統領とカマラ・ハリス次期副大統領のコンビは、来年1月の政権移行に向け、着々と準備作業を進めています。

 政治記者として永田町を約15年間にわたり取材し、現在は駐夫として、さらには娘を持つ父親として米国に居住する私から見て、今回の大統領選を巡る動きには、驚かされることばかりです。

 それは、次期正副大統領それぞれのパートナーのキャリア形成における重大な決断と、米国社会の多様性を政治の場に反映させ、非白人や女性を積極的に登用しようとしているバイデン流人事です。

ニューヨーク・マンハッタンの投票所(写真提供:小西さん)
ニューヨーク・マンハッタンの投票所(写真提供:小西さん)

「今夜の出来事を見ている、すべての小さな女の子たちは…」

 「この人が今度、副大統領になるハリスさんだからね。女の人で初めてだよ。よく見て、話を聞いておくんですよ」

 バイデン氏の勝利が確実になった11月7日の夜、週末補習校の宿題を終え、iPadでYouTubeを楽しんでいた長女(8歳)と長男(6歳)から無理やりiPadを取り上げ、バイデン氏に先立ち、勝利演説を始めたハリス氏の言葉に親子ともども聞き入りました。今この瞬間に米国に住んでいたという記憶を子どもたちに刻んでもらいたく、どうしても見せておきたかったのです。

 白いパンツスーツに身を固め、背筋をまっすぐに伸ばし、豊かな表情をふんだんに浮かべながら、ソフトな口調で語り掛けたハリス氏。しかし、演説の内容は極めて力強く、聞く人の心を揺さぶりました。

 そして、「私は初めての女性副大統領かもしれないが、最後とはならない。というのも、今夜の出来事を見ているすべての小さな女の子たちは、米国が可能性に満ちた国だということを見ているからだ」と、後世に残る言葉を紡ぎました。

カマラ・ハリス氏の勝利演説。「私は最後とはならない」(写真:AP/アフロ)
カマラ・ハリス氏の勝利演説。「私は最後とはならない」(写真:AP/アフロ)

 長女に感想を聞いてみると、「そんな偉い人が話してるのに、どうして聞いている人が少ないの?」と子どもらしい返事でしたので、「コロナで、人が多く集まれないからだよ」と答えておきました。期待したような言葉ではありませんでしたが、いつの日か、リアルタイムに見たスピーチのことを思い返す日が来るかもしれません。

 私が彼女の演説で注目した点は、もう一つあります。