リアルの場で、魅力的な識者の知見に触れることができると大好評のイベント「魅ならい塾」。日経DUALアンバサダーであり、母子健康の予防医療コンサルタントでもある細川モモさんと、株式会社シードの原田葵さんをお迎えし、今子育て世代が直面している健康課題「栄養不足による発育阻害」「貧血」「子どもの視力の低下」などについての予防法や、幸せな子育ての秘訣について教えていただきました。会場いっぱいに集まった仕事帰りの働くママたちが、忙しい日常の狭間に子育てに役立つ情報を学ぶ熱心な姿が見受けられました。

貧血は、子育て満足度や幸福度に影響する!?

 まずは、一般社団法人ラブテリ代表理事で予防医療コンサルタントの細川モモさんと、株式会社シードの原田葵さんによるトークセッション。ナビゲーターはフリーアナウンサーの三浦綾子さんが務めました。

 一児の母で現在第二子を妊娠中でもある細川さんは、「子どもの前ではできるだけ笑顔でいたい。そのためにも、私自身が幸せだと思える子育てを意識しています。その幸せの中の必須条件が家族の健康。特に娘に対しては、栄養不足による発育阻害が起こらないようにと強く意識しています」と、自身が子育てにおいて心がけていることについて話しました。

<b>細川モモ(ほそかわ・もも)さん</b><br>一般社団法人ラブテリ代表理事/予防医療コンサルタント/2011~2015ミス・ユニバース・ジャパン オフィシャルトレーナー<br>予防医療の普及を主な活動とする医療/健康の専門家からなるプロフェッショナルチーム「Luvtelli Tokyo&NewYork(ラブテリ トーキョー&ニューヨーク)」の代表理事。特に若い世代の女性の健康サポートを通じて、次世代の子どもたちの健康増進に貢献すべく、各種研究/啓蒙/環境整備までを一貫して行う数少ない非営利組織を運営。代表的な取り組みに、“測って/知って/学ぶ”をコンセプトに全国で開催中の「働き女子保健室」「おやこ保健室」があり、参加者データを解析した「働き女子白書」「こどもすくよか白書」を5年連続でリリースしている
細川モモ(ほそかわ・もも)さん
一般社団法人ラブテリ代表理事/予防医療コンサルタント/2011~2015ミス・ユニバース・ジャパン オフィシャルトレーナー
予防医療の普及を主な活動とする医療/健康の専門家からなるプロフェッショナルチーム「Luvtelli Tokyo&NewYork(ラブテリ トーキョー&ニューヨーク)」の代表理事。特に若い世代の女性の健康サポートを通じて、次世代の子どもたちの健康増進に貢献すべく、各種研究/啓蒙/環境整備までを一貫して行う数少ない非営利組織を運営。代表的な取り組みに、“測って/知って/学ぶ”をコンセプトに全国で開催中の「働き女子保健室」「おやこ保健室」があり、参加者データを解析した「働き女子白書」「こどもすくよか白書」を5年連続でリリースしている

 そして細川さんは、自身が率いるラブテリが0~13歳のお子さんのいる家庭約2700世帯から回答を得てまとめた親子の健康に関する調査レポート「こどもすくよか白書(2019年6月13日版)」をもとに、今、子育て世代が直面している健康課題の一つに、「貧血」があると述べました。

 「この調査を通じて、幸せな子育てとは何か?ということを調べているのですが、現在分かっているのが、体力のあるお母さんの方が幸せな子育てができているというということ。さらに、体力に加えて貧血がない状態のお母さんの方が、子育て満足度が高いということが分かりました。ただ、私どもの調査によると、出産経験があるお母さんの概ね3人に1人が隠れ貧血で、特に、出産時の出血量が多かったお母さんがそのまま貧血を引きずっています。貧血は体力にも影響しますし、産後うつのリスクも高めてしまいます。イライラカリカリしていては穏やかに子育てできなくなりますので、まずはお母さんが自身の貧血に目を向けてきちんと回復させることが、幸せな子育てをするための第一条件だと思います」(細川さん)。

見過ごされてしまいがちな貧血のリスクについて解説してもらいました
見過ごされてしまいがちな貧血のリスクについて解説してもらいました

 一方で今、子どもにも貧血に関する問題があるそうです。

 「日本では子どもの貧血のスクリーニングが行われないので、自分のお子さんが貧血かどうかを把握されていない方が多いと思うのですが、実は子どもは離乳期貧血などの特有の貧血リスクがあります。私どもの調査では、概ね2~13歳までの子どもたちの約4割に貧血の疑いがあるという結果が出ています。これは相当深刻な状況だと思うのです」(細川さん)。

 貧血の原因が「鉄分」の不足にあることはよく知られていますが、子どもにとって鉄分は、また別の役割も持つ重要な栄養素なのだと細川さんは言います。

 「鉄分は、脳の中枢神経の発達をリードする栄養素であり、ハッピーホルモン“セロトニン”などを作り出すために必須の栄養素です。脳が急速に発達する時期に鉄不足があると、運動能力や認知能力、感情調節機能などに影響し、小学校に入っても成績がふるわないとか、よく泣いたり落ち着きがないなど、情緒面も安定しません。ちょっとうちの子、育てにくいなぁと感じている方は、鉄分不足を疑ってみるというのもあると思います。小学生になると貧血リスクの高い子では本人が日中の疲れを自覚している割合が高かったです」

 子どもの貧血リスクが低いほど、お母さんの幸福度は高くなっていたと語る細川さん。そんな子どもの貧血リスクに影響しているのが、鉄分に対する母親のリテラシーなのだそうです。

 「実は、約8割のお母さんが鉄分の重要性を認知しています。しかし、多くの方が何の対策も行っていないのが現実です。子どもの貧血リスクは、鉄分を含む食材をお母さんがどれくらい認知しているかに左右されます。鉄分は、動物性のものの方が吸収率が高いので、赤身の肉や魚などのたんぱく質の摂取頻度を高めることを意識すると同時に、食が細い子や偏食の子にはフォローアップミルクを使うなどして、しっかり与えてほしいですね」