エージングの2大要因「酸化」「糖化」は若い頃からじわじわ進んでいる!?

黒住 加齢に伴う肌や体の変化は誰にでも生じることですよね。でも年齢を重ねても若々しく見える人もいれば、少し老けて見える人もいるなど、エージングのスピードや現れ方は個人差が大きいと感じています。その差はどのような原因によって生まれてくるのでしょうか。

髙瀬 「酸化」と「糖化」。この2つが肌や体のエージングに深く関わっていることが近年のさまざまな研究から分かっています。

 酸化とは上の図にもあるように、いわば「体のサビ」。その引き金になるのが体内で発生する活性酸素です。活性酸素とは、呼吸によって取り込まれた酸素が外部からのさまざまな刺激によって変化したもの。通常は、もともと体に備わっている抗酸化力によって活性酸素が悪さをしないようコントロールされていますが、紫外線やストレス、喫煙、大気汚染物質などの影響によって活性酸素が過剰になると体内のバランスが崩れ、「酸化ストレス」と呼ばれる状態になります。

 活性酸素は皮脂や中性脂肪、コレステロールなどを酸化させ、「過酸化脂質」という細胞にダメージを与える物質を発生させます。過酸化脂質によって皮膚の細胞が傷つくと、シミやシワなどの原因に。体においてはがんや動脈硬化などさまざまな病気や老化の要因になると考えられています。

黒住 シミやシワなど見た目の問題はもちろん、将来の健康を左右する要因の一つが酸化だということは、できれば早いうちから知っておきたいことですね。

髙瀬 そう思います。もう一つの「糖化」も若い頃からの食生活が大きく影響していたりするのですよ。

 糖化は「体の焦げ」によく例えられます。食事などから取った余分な糖が体の中のたんぱく質と結びつくと、たんぱく質が変性し、「AGEs(糖化最終生成物)」という物質が生み出されます。お肉などを焼くとこんがりとした褐色になりますが、それと同じようなことが体の中でも起こるのです。

 AGEsは一度つくられると元には戻らず、体内に蓄積されていきます。その結果、糖尿病や腎機能の低下、動脈硬化といった病気のリスクを高める要因となると考えられています。

 一方、肌においては黄ぐすみとなって現れてくることが多いですね。体の中の“焦げ”によって肌の透明感が失われてしまうのです。

黒住紗織(くろずみ・さおり)/日経BP総合研究所 上席研究員
黒住紗織(くろずみ・さおり)/日経BP総合研究所 上席研究員
筑波大学卒業。『日経ヘルス』『日経ヘルスプルミエ』の編集委員を経て現職。女性と健康・女性医療を専門分野とし、女性の健康を多角的にサポート。著書に『わたしのカラダは私が守る 女性ホルモンの教科書』(共著、日経BP)がある

黒住 余分な糖が原因ということは、甘いものなどの取り過ぎは当然良くないわけですよね。

髙瀬 はい。また、「食事の時間がないから、とりあえず炭水化物でおなかを満たす」というような食生活も危険です。血糖値はなだらかに上昇する方がいいのですが、空腹時に糖質の多い食品をいきなり取ると、血糖値が急激に上昇するためです。高血糖状態は糖化を促進する大きな要因の一つなので、食べるものと食べ方のどちらも気をつけることが大切ですね。明らかに食べ過ぎているけれど運動をする習慣がないという人もやはり血糖値が高くなりやすいので注意が必要です。