子どもが社会の真ん中にいる
もっとも、オランダであっても働き方に自由がない会社もありますし、自分のように、フリーランスなので自分で時間を調整できるから、というパターンもあります。自分はその分、子どもが寝静まった夜中に働くことも多いので、逆に日本の今の働き方にはマッチしていない、いわゆるブラック企業型の労働環境かもしれません。もちろん、これについては自己責任なので、文句を言うつもりはありません。ただ、オランダであっても理想的な労働環境だけではない、ということをお伝えしておきます。
ただし、たとえそうであっても日本と大きく違うなあ、と感じることがあります。
それは「子どもが社会の真ん中にいる」ということ。子どもが小さいうちは、やはり子育て中心の生活になると思いますが、それがたやすくできる社会環境や教育環境があります。
幼児教育の無償化が先の選挙でも公約に挙がっていましたが、オランダでは教育費は基本的に無料です。
学校の保護者会が多いことや、地元のスポーツクラブを通じてのコミュニティーに参加することなどは、すべて子どもが中心であるからこそできることです。オランダでは、サッカーやホッケーが国民的なスポーツといわれますが、それは単純にその競技が盛んなだけではなく、子どもの活動を通して、こうした地元社会とのつながりができることも意味しているのだと感じます。
もちろん、子連れでも行ける飲食店が多い、至る所に公園がある、などということもあります。
こうしたことすべてが子育てのしやすさにつながっているのです。
不思議なもので、このような環境にいると保護者会などの親の出ごとにも、積極的に出るようになります。その中で、保護者もどんどん友達をつくっていくと、ますます地元になじめるのだと思いますが、まだまだオランダ語が不自由なので苦労しています。
自分の場合、オランダの仕事環境では、また特に外国人が多いような現場では、ほぼ英語で済ますことができるのですが、子どものつながりから生まれるコミュニティーではオランダ語なのです。仕事や生活をしていくには英語だけでも可能ですが、やっぱりオランダ語ができると、より深くコミュインティーに入ることができるということを子育てを通じて実感しています。
ともあれ、子どもが真ん中にいる社会は、子育てがしやすい社会です。でも、それは結局、大人も生活がしやすい社会なのだなあと、感じています。
(文・写真/吉田和充)