経営者は、社員に失敗を見せてはいけない

―― 経営に関するアイデアはどのように考えつくのでしょうか?

諏訪 社長になってから、とにかく思いついたらノートに書くようにしています。それを頭の中に常に入れておき、足し算・引き算をしていき、こういう順序で解決できるのではないか、とひらめくことが多いです。思いつくとやってみたくなり、うずうずしてしまう。だから、行動はすばやいです。

―― 新しいことにチャレンジしようとすると、社員から反発が生まれることもあると思います。

諏訪 経営者は先を見ているので、最初は反発もあります。でも、そこまで社員に言う必要はないと思います。経営者は成功しなきゃいけないから、社員に失敗を見せてはいけない。だから、先の目標を社員に言わなくてもいい。でも、結果は出さないといけない。

 最初は「何をするんだ!?」という感じで反発があるのですが、ちゃんと実績を積んでいけば、期待感になるんです。「また動き出したぞ社長、なんかやってくれるよ!」みたいな。ここまで来るのに10年以上かかりました。だから、いま私がやることに反対する人はいません。

 反発されても突き進んでいくためには、確固たる信念と自信が必要だと思います。私自身、自分の確固たるものがないと攻めないです。数打てば当たるではなく、これだと思うものしか動きません。

―― 確固たる信念は、どういったところから生まれているのでしょうか?

諏訪 日本は資源がない国なので、ものづくりで生きていかないといけない、成長していかないといけない。自分の会社だけではなく、全体で生き残って成長していかないといけない。その使命感が強いです。

 先日、右腕となる社員に「この目標設定で本当に大丈夫なんですか?」と言われました。そのとき「私が大丈夫だと言わなかったら、誰が大丈夫だって言うんだ。その大丈夫を実現していくために、これから計画を立てるのではないか」と返しました。普通は計画があってからの大丈夫なのですが、経営者はまず大丈夫があるんですよ。それを絶対成功させるために計画を練っていく。その感覚が、社員と経営者の違いだと思います。だから反発されることもあります。

 でも、人間は慣れてくると、少々なことでは動じなくなってきます。先日、社長業はストレスがないんですね、と人から言われました。でも、ストレスがない人なんていないです。それを見せるか見せないかだけであって、経営者は見せてはいけない職業。困った、どうしよう、という経営者に付いていこうと思いますか?常に前を向く姿勢が、経営者のスタイルだと思っています。

いじめっ子にやり返した成功体験が今につながっている

―― 諏訪さんは小さいころからリーダーシップを発揮されていたのですか?

諏訪 小さいころは大人しくて目立たない子でした。それが、小学3年生のときに、強烈ないじめっこの隣にさせられたんです。先生も手が焼くようなで悪ガキです。先生にいやだ、と言いにいったら、「これはあなたにしかお願いできない。あなたは芯が強い子だから」と言われました。

 何かとちょっかい出されたり、泣かされたりしていたのですが、ある時、給食の時間に冷たい牛乳を投げられたんです。私は熱いシチューを投げ返して、取っ組み合いのケンカをしました。それまで誰も声をかけてこなかったのに、初めて「大丈夫?」と女の子たちから声をかけられました。

 いじめっ子の態度はみんなが困っていたことで、私にしか務まらない、という使命感でやり返したら、みんなが声をかけてくれた、というのは自分の中で最初の成功体験かもしれません。それから、中学では学級委員などをやっていました。