2017年10月29日、小学校1年生から3年生までの子どもを対象に、ゲームや実験を通して科学や数理へ興味を抱くきっかけ作りの場として無料で開催しているイベント、「ダヴィンチ☆マスターズ」が開催され、多くの子どもたちが集まりました。当日は保護者向け特別講演会「『世界に通じる子を育てる』ために、今、必要な学びとは何なのか?」も行われ、筑波大学 学長補佐の落合陽一先生、武蔵高等学校中学校の梶取弘昌校長、そして進行役のSAPIX YOZEMI GROUP共同代表の高宮敏郎氏が、今の教育について、これからの教育について、忌憚のない意見を交わしました。
ここでは講演の様子を一部、お届けします。

学校が子どもの囲い込みをしているようではダメ

 グローバル人材が求められる昨今。では教育において、グローバル化とは何か。世界に通用する子どもを育てるためには、何が必要なのか。普段から「『世界』とつながる」ことを意識的に発信している武蔵高等学校中学校の梶取弘昌校長は、世界に雄飛するということは物理的に海外に出ることだけを指すのではありませんと言います。「『世界』とは自分を取り巻く環境、他者すべてです。そことつながらないと学びの意味はないんです」(梶取校長)。

 そうした意味で、「例えば月曜日は開成、火曜日は麻布、水曜日は女子学院へ…などと生徒たちが自由に学校間を行き来できるようになり、行きたいところで学べるように」なることが望ましく、他者とつながり、ぶつかり合い、学んでいくことが子どもたちにとって大切だと言います。また生徒を囲い込む必要はないと教育現場の変化の必要性を説きました。また、学校はまだまだ子どもの囲い込みをしてしまう傾向があることも指摘しています。

 筑波大学 学長補佐の落合陽一先生は、大学でありがちな学生確保のための囲い込みはいい影響を与えないとし、自身の研究室では積極的に学生を海外に留学させているといいます。これは「留学した学生がカリフォルニアやドイツにいたほうが、相対的なネットワークが強くなる」という効用もありますし、「ある一定の場所に人をとどめておくということは、すごく近代的な発想」で、グローバル化の足かせにもなりかねないことも窺わせました。僕は大学の学生そのものも、日本人をバッサリ切ってアジアからもっと受け入れましょうとか、教員もアジアから採用しましょうと提案して怒られています(笑)」と落合先生。また梶取先生も落合先生も、グローバル人材を輩出したいのであれば、教育現場が変わる必要があると言い、文部科学省が大学の職員や教員の給与を決めているような状態、独立採算が成立していないことに疑問を呈しています。

 「皆さん、子どもが進学する学校の経営状態は調べたほうがいいですよ」(落合先生)

 「こんな話をするなんて、と思うかもしれませんが、皆さんもご存じの通り、安全な道はどこにもないんです」(梶取校長)。

 安全な中学、高校、大学に行って安全な仕事に就かせたいと思うのが親心ですし、そのために中学受験を頑張るご家庭も多いと思いますが、残念ながら安全なレールはないですよね。だからこそ、世界とつながる必要がある。そのためには自分で考える力をつけていかなければならない。ちゃんと自分でものを考えられるように育てなければ」(梶取校長)というわけです。