自閉症、ダウン症、低身長症、LGBTなど、“違い”を抱えた子どもを持つ6組の親子の姿を映し出したドキュメンタリー映画『いろとりどりの親子』。レイチェル・ドレッツィン監督に、子どもに“違い”をどう教えるかなどについて話を聞きました。映画の公開前に行われたドレッツィン監督と坂本美雨さんのトークイベントの様子も紹介します。3歳の女の子のママでもある坂本さんは、この映画をどう見たのでしょうか。

レイチェル・ドレッツィン
 

1965年生まれ。イェール大学卒。長年にわたり、米国の公共放送PBSの有名ドキュメンタリーシリーズ『Frontline』を制作。夫で映画製作者のバラク・グッドマンと、ブルックリンを拠点とする制作会社Ark Mediaを共同で設立。時事性の高い社会派の作品を多く手掛けており、本作が長編映画デビューとなる。エミー賞、ピーボディ賞、デュポン・コロンビア賞、ロバート・F・ケネディ・ジャーナリズム賞などのドキュメンタリー映画賞を多数受賞。15~20歳までの3人の子どもがいる。

子どもをありのまま受け入れることに子育ての喜びがある

編集部(以下、――) 映画『いろとりどりの親子』の原作著者はアンドリュー・ソロモンさん。彼はゲイであることを親に受け入れられずに苦しみ、やはり、“違い”を抱えている他の親子が、違いにどのように向き合っているかを検証するために、300以上の親子にインタビューを行いました。その調査結果をまとめたのが本作の原作となった『FAR FROM THE TREE』(日本語版での出版は2019年秋の予定)で、全米批評家協会賞や、ニューヨーク・タイムズ紙のベストブックに選ばれ、世界中で大ベストセラーとなりましたね。

 30を超える映画化のオファーがある中、見事、ドレッツィン監督の企画が選ばれたそうですね。この映画を通して、監督は観客や社会に対して、どんなことを伝えたいと考えていますか?

レイチェル・ドレッツィン監督(以下、ドレッツィン) 自分たちと違う人たちの日常に対して「こうなんじゃないか」と思い込んでいることが、いかに表面的なことであるか知ってもらいたいです。

 自分と違う人たちを勝手な思い込みで誤解していることがありませんか。私もそうでしたので、この映画を通して、違いを抱えた人や、彼らの家族の日常をより近いところから見てもらい、世の中にある様々な違いに対してオープンな気持ちになってもらえたらと思っています。

―― 世の中には違いのある子どもを、ありのまま愛することが難しい親もいるかと思います。子どもの人格を無視したり、子どもを虐待したりする親もいるなど、色々な親子の問題があります。監督は親子関係において、どのような問題意識をお持ちでしょうか?

ドレッツィン 子どもがどんなアイデンティティーを持っていても、親が思うイメージにはめようと押し付けないことが何よりも大切なのではないかと思います。典型的な型にはめようと、親がどんなに努力したとしても、大体はうまくいきません

 子どもを、あるがままに受け入れることに、子育ての喜びがあるのではないかと思うんです。親は子どもに影響を与えるものだけれど、影響を与えても、変わるものと変わらないものが人にはあると思います。変えられない部分を受け入れる、その道のりが親子関係において大事なのではないかと思います。