イクメンと軽く言えるほど育児ってラクではない

―― イクメンという言葉は、メジャーになった分、男性が育児をちょっとでもやったらそう呼ばれて、それでOKという軽い免罪符のようにも使われるようになりました。

ヒロシ でも、実際の育児はそんなものじゃないよね。特に新生児は、夫婦二人とも同じように当事者意識をもって臨まないと回っていかないです。24時間お世話をしないと生きられない赤ちゃんを前にしたとき、夫婦で「家事・育児はどちらの仕事だ?」となどと言っている場合ではない。1人目が生まれたときに、すごく強くこの感覚を持ちました。そして同じように感じる人も増えてきた。そうして家事・育児を男性が担うことはごく自然になり、イクメンともてはやされることが不自然に感じられるようなった。だからこそ、今は「イクメン、さよなら」の時代になってきたのだと思います

えーちゃん 世代によっても、意識の差があるよね。シンやうちに子どもが生まれたのはまだ2年前。そのときはイクメンという言葉は下火になっていて、父親が家事・育児をやることは当たり前になってきていた。だいぶ土壌ができていたのかもしれないね。僕が父親になったころは、イクメンからさらに一歩進んだ「働き方改革」のほうが社会で取り上げられるようになったのも大きいと思う

ヒロシ 確かにそういう時代だったね。しかも、それは今も続いている。特に大きな会社では、意思決定者が50代以上というところも多い。その中で、過去の成功体験から思考のOSが1990年代くらいで止まっている人も多い。21世紀を生きているのに、夫婦像や働き方はまだ20世紀。そういうギャップがあるから、働き方改革という言葉が必要なんだろうね。それなのに改革が進まなくて、育児や家事もやりたい男性が苦しんだり、もっと仕事をしたい女性が活躍できないでいたりする。そういうのはのはもったいないよね。

えーちゃん こんなふうに言っているけど、僕自身、現実にはギャップもあるんですよ。育児をやりたいという気持ちが、なかなか行動に出せないこともある。休日でも頭の中に仕事があって、娘と遊んでいても心はここにない、みたいなことが一時期あった。ゴロゴロしていると、「私は家政婦ではない」と妻に怒られたりもしたよ(笑)。

ヒロシ たまにそんなことがあっても、家庭が回っているならいいんじゃないかな。夫と妻が「こっちがやっているのにあっちはやっていない」と対立するのではなくて、2人で一つのチームになるのが大事だと思う。

 そうしたら、今、奥さんが育休中のシンやえーちゃんちの状況みたいに、どちらかに育児の分担が偏っていても「今はパートナーが仕事にアクセル踏む番だから」と納得できるし、「だけど、今度は交代ね」という考えも持てる。

 そういうのは、本音で話せるコミュニケーションが土台になるよね。一番大事なのは、夫婦としてのフラットな関係だと思う。といいつつ、うちはまだまだ対立しがちなので、これからそういう夫婦の関係を目指していきたい……。

えーちゃん 問題があるときって、夫婦だけで話し合って解決するのは難しい。どうしても自分の見方のバイアスがかかってしまうから。そういうときにPtoCのパパたちの存在はありがたいよね

シン まさにこの間そういうことがあった! そのときにすごく救われました。

シンさんがパパたちに救われたというその出来事とは? 次回は、新世代パパたちにとってのパパコミュニティーの存在意義をお伝えします。

(取材・文/日経DUAL編集部 福本千秋 撮影/木村 輝)