新世代のパパたちは「イクメン」という言葉や育児の参加についてどのように考えているのでしょうか。前回は、30代を中心としたパパコミュニティー「一般社団法人Papa to Children(PtoC)」の理事パパたちから、「イクメン」という言葉に対しての違和感や、パパたちが育児を当たり前にコミットすべきものと捉えていることをお聞きしました。続編では、パパたちのコミュニティーの存在意義や妻との関係性についてお聞きしていきます。

(上) 新世代パパは「イクメンよ ありがとう サヨナラ」
(下) 妻不機嫌の謎をパパ仲間に相談 問題を切り分け ←今回はココ

左から細井さん(えーちゃん)、川元さん(ヒロシ)、金沢さん(シン)
左から細井さん(えーちゃん)、川元さん(ヒロシ)、金沢さん(シン)
<参加者プロフィール>

川元浩嗣さん(以下、ヒロシ)
PtoC代表理事
2017年1月の創立メンバーの一人。都市銀行に8年半、系列VCで半年勤務した後独立。第1子の妊娠をきっかけに独立を決意して起業し、現在はMi6代表取締役CEO。5歳と2歳の姉妹、大手電機メーカー勤務の妻との4人家族。毎日の朝ごはん作りと保育園の送り、週1〜2回はお迎えも担当している。第1子誕生時は銀行員のため産後すぐも週末パパ状態。第2子誕生の時は、1週間長女と2人暮らしを体験。比較的時間に融通が利くこともあり、妻と相談して育休は取らなかった。35歳。

金沢慎太郎さん(以下、シン)
PtoC理事
メガベンチャーに6年半勤務した後、長女が生まれて間もなく転職。現在はエッグフォワード執行役員。1歳9カ月の長女と教員の妻との3人家族。来年4月入園に向けて保活中。週に1度は7時までに帰宅し、入浴、寝かしつけまでできるように努力している。休日の1日は、妻がリラックスできる時間を作れるように育児を行う。長女の誕生時、産後すぐから1カ月間、有休などを使いつつ育児中心の生活を送った。30歳。

細井栄司さん(以下、えーちゃん)
PtoC理事
税理士法人が母体のKFSグループ東京チーフ。1歳8カ月の長男と学童クラブ勤務の妻との3人家族。今春、待機児童になってしまったため、来年4月の入園に向けて保活中。子どもと触れ合ってほしいという妻の希望もあり、寝かしつけ時間までに帰宅。寝る前の息子とのハグと、子どもが寝た後に妻と話すのが日課。長男の誕生時は、会社の勧めもあり、生後1カ月のときに5日間の育休を取得した。35歳。

始めはみんなダメパパ だからPtoCを立ち上げた

ヒロシこと川元さんは5歳と2歳の姉妹のパパ
ヒロシこと川元さんは5歳と2歳の姉妹のパパ

ヒロシ 産後って、肉体的にも精神的にもあれもこれも本当に大変。そのつらさが原因で夫婦関係も大変なことになったりするよね。うちは、夫婦ともに育児が苦手なので、何回崩壊しかけたか(笑)。1人目のときは銀行員だったので、週末パパ状態だったし、僕が起業した1年目は無報酬で耐える時期だったので経済的にも負担をかけたんだよね。育児と起業の谷のダブルパンチで妻がその過程で倒れたこともあったりと本当に苦しい思いをさせたし、僕も苦しかった。そういうことがあったので、僕の中では「夫婦の人間性の回復」というのがPtoCの裏テーマです

えーちゃん PtoCの会員って確かに夫婦関係や育児、仕事とのバランスで困っていたり、悩んでいたりしていて、ベースには家庭を大切にしたいという想いがあって入って来ているね。

ヒロシ 多くの夫の産後は、育児が初めてで、ゲーム的な表現をするとパパレベル0とか1からのスタートなんだと思う。一方で妻は妊娠中から身体が変化するし、産後実家に帰省しているうちに1カ月もするとママレベル20くらいに上がってる。このギャップが多くのパパが陥る「使えない部下」状態を生み出すんじゃないかな。

えーちゃん PtoCはそういうパパたちのセーフティーネットでもあるよね。僕も結婚し子どもが生まれたとき、仕事だけでなく家庭も大切にする生き方を選択するのは自然な流れでした。育児やるぞ!と意気込んでいるというより、妻と一緒に取り組みたいし、やるなら楽しみたいという気持ちがあったんだけど、確かに困ることもある。そんなときに、PtoCで色々な人と話ができるのが良かったと思っています。

―― 奥さんと話すのとは違いますか? 悩みや困り事があるとき、奥様とは話さない?

シン 最終的には妻と話して決断したりするけれど、自分だけだと、どうしても独りよがりの意見になってしまう。PtoCのみんなに相談できることで、より広い視点から妻とも話ができるよね

えーちゃん 考えを整理する前に身内である妻と話すと感情的になっていたりするからね。「仕事が忙しくなって育児や家事もこなすのが大変」ということがあって最初は自分の視点でしか物事を見られていない。「自分は大変」、でも、実際は「妻も大変」というところに思いが至らないんだよね。でも、PtoCのメンバーたちと話しているうちに、感情のバイアスが外れて今の状況を客観視することができるようになる。

相談することで見えないことを言葉にしてもらえ、問題を切り分けられる

シンこと金沢さんは1歳9カ月の女の子のパパ
シンこと金沢さんは1歳9カ月の女の子のパパ

シン パパ一人で解決するのって、結構難しいと思う。この間も、妻が辛そうな顔をしていた。いつもは明るい妻がなぜ辛そうな状態なのか、僕にはわからなかった。だから、そのときはしっかり話もできなくて、翌朝は出勤したときも気が重かったんです

 モヤモヤしていたので、PtoCの理事メンバーとのチャットグループにそのことを書いたんですね。で、お昼休みにスマホを見たら、たくさんのメンバーからメッセージが来ていた。僕、もうトイレで泣きましたよ(笑)。おかげで帰宅後、自分の気持ちも含めて、ちゃんと妻と話すことができました。

 そういうふうに困ったり悩んだりしたときに、自分が置かれている状況をみんなに見てもらうと、他のパパが「奥さんはこういうふうに思っているんじゃない?」とか「うちもそうだった」と自分には見えない部分を鏡に映すように言葉にしてくれるんです。そうすると、「確かにこれは自分がダメなところだった、でもこっちは奥さんととちゃんと話さないといけない部分だ」と問題を切り分けて理解できる。そういうプロセスがなかったら、「奥さんはそう言うけど、俺はこう思っているし」で終わってしまうだろうね。

ヒロシ シンの話は理事同士のグループチャット上でのやり取りのことだったけれど、リアルに集まる「パパ未来会議」でも同じようなことがあるよね。