働く姿勢をなるべく見せる。アドバイスはしても、レールはひかない

―― オンとオフはどのように切り替えていますか?

諏訪 家に仕事は持ち込まないようにしています。一方で、息子には私が働いている姿勢をなるべく見せようと思っています。なぜなら、私も父が働いている姿勢をみてきたから。家では優しくて面白い父が、一歩外に出ると“社長”で、身だしなみやオーラが違う。人との関わり方やコミュニケーション術など、直に見て学ぶことができました。

 私自身も、家だと寝ているか踊っているかのどちらかだ、と息子は言っています。だから、一緒に取引先に行って駐車場で待たせたり、タイに視察に行くときに連れて行ったりしました。

 だからといって、父が私に「後を継いで欲しい」と言ったことがなかったように、私も息子に「会社を継いで」と言ったことはありません。息子にはやりたいことをやらせてあげたい、良き相談相手でフォロワーになろうと思っています。アドバイスはするけれど、決してレールはひかない。何かに夢を持って人生を楽しんでもらいたいと思います。

―― お父様の影響は大きいのですね。

諏訪 やはり蛙の子は蛙。父の真似をしていますね。父は忙しかったので、年に2回くらいしか一緒に食事をできませんでした。その分、思い出も強烈(笑)。だから、愛情は時間の長さではなく深さ。どれだけ子どもの記憶に残すか。私はそれに命をかけて子育てをしています。

 先日息子が20歳になり、2人で食事をしたのもその1つ。その時初めて、息子が産まれた経緯を話したんです。息子からは、いままで育ててきてくれてありがとうと言われました。お互いこれからは人生を楽しくするために、精一杯生きていきましょう、と2人で約束を交わしました。いい記念日になりました。

―― もう20歳なのですね。

諏訪 いまは大学で国際社会を学んでいます。そのなかの経営の授業で書いたレポートが、友達と違っていてなぜだろう、という議論になりました。

 内容は、ある洋服店があり、自分はその隣に洋服店を開業しようと思っている。資金など様々な状況がある中、あなたはその隣に開業するか?というものでした。みんなは開業すると答えたけれど、息子は開業しないと答えました。なぜ開業しないのか、と聞いたら、すでにお店があるから、と。それは2代目、3代目の考え方なんですよね。つまり、守り。

 すでに店舗があるなら、リスクの方が高いと考える。だけど、そうじゃない。マーケティングを行い、相乗効果が期待できるものであればゴーをかけてもいい。マイナス要因があれば、引くべきである、とアドバイスしました。

 息子と経営の話をすることができるようになり、うれしいですね。私自身は父とはできなかったので。息子の友達が週末泊まりにくると、一緒に経営論や恋愛論など話しています。

―― 諏訪さんと息子さんは似ているタイプですか?

諏訪 私は理論派ですが、息子は感覚派。私と夫がケンカをすると、お互い理系同士なので理詰めになり、面倒くさいです。お互い言っていることは似ていても、言い方や根拠が違うとぶつかる。最終的には息子が出てきて、言っていることは同じじゃない?といってケンカが終わるんです(笑)。いい潤滑油になっています。