繰り返す急性中耳炎には漢方薬が効果的

 1回急性中耳炎になると、1年のうちに何度も繰り返すことがあります。そうした「反復性中耳炎」になる原因には、やはり免疫力が弱いことや、耐性菌をもらいやすいことが挙げられます。

 「急性中耳炎を繰り返す場合には、『十全大補湯』という漢方薬を飲むのも1つの方法です。調査の結果、十全大補湯には急性中耳炎の反復を予防する効果があることが分かっています。一般的に漢方薬は苦くて飲みにくいイメージがありますが、ちょっと甘めで飲みやすいので、お子さんでも大丈夫です」

 それでも繰り返してしまう、漢方薬が効かない子どもの場合には、「鼓膜チューブ」がおすすめだ、と工藤先生は話します。

 「鼓膜に穴が開いている間は中耳炎になりにくいです。鼓膜チューブは、鼓膜を切開したところが塞がらないように鼓膜にはめるものです。いつも耳に空気が入ってくるため、鼓膜の状態が落ち着きます。使用するのは『短期型』というタイプで、半年ぐらいで自然に鼓膜からはずれてきます」

 急性中耳炎になりやすい子の場合、親はどんな点に気を付ければよいでしょうか?

 「今までお話しした通り、0~2才ぐらいまでの乳幼児は免疫力が低く、耐性菌をもらいやすいので、病気のときには集団保育はお休みし、個別に保育するのが望ましいところです。でも、共働きをされていると、ママやパパが何日も休んだり、誰かの手を借りるのは難しいでしょう。鼻水を出し始めたらこまめに吸引する、子どもの鼻水を拭いたらうつらないように必ず1回ごとに手を洗うなどを心がけてください」

 鼻水が出ていても、共働き家庭ではなかなか受診する時間が取れないこともあります。最後に、鼻水吸引に通えない場合はどうしたらよいかを伺いました。

 「市販の鼻吸い器で取ってあげましょう。最近は電動の鼻吸い器がありますが、あまり強くすると鼻の粘膜が傷ついてしまうので、ほどほどの強さで操作してください。大人が管を口に当てて吸うタイプの場合、直接吸うとウイルスが大人にもうつってしまうので、管の中にフィルターがあるものを選ぶとよいでしょう」

 アリス耳鼻咽喉科では、鼻水がとれやすくなる「重曹食塩水」を処方しているといいます。

 「当院で処方している重曹食塩水は、生理食塩水に重曹と食塩を混ぜたものですが、家庭でも作ることができます。鼻水がとれやすくなるので、鼻吸い器を使う前に2~3滴点鼻します」

 作り方は、以下の通り。急性中耳炎のときだけでなく、大人の鼻うがいにも使えるそうなので、これからの季節には重宝しそうです。

●重曹食塩水の作り方
・100mlの水に対して食用の重曹0.5g、食塩1gの割合で入れ、混ぜる
・500mlのペットボトルなどに作り、冷蔵庫で保存し、1週間ほどで使い切る
・使用する際は、100円ショップなどで売られている点鼻用の容器に移す

工藤典代(くどう・ふみよ)
アリス耳鼻咽喉科院長
氏名(しめい) 三重県出身。大阪大学医学部卒業後、千葉大学耳鼻咽喉科に入局。千葉労災病院、国立千葉病院、千葉県がんセンターなどで研修。国保成東病院耳鼻咽喉科初代医長、千葉県こども病院初代部長、千葉県立衛生短期大学教授、千葉県立保健医療大学健康科学部教授を経て、2016年9月千葉市花見川区幕張本郷にアリス耳鼻咽喉科開院。同じ建物内にある小児科と連携した地域のかかりつけ耳鼻科として、多くの乳幼児を診察するほか、幅広い年齢層に対応している。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本気管食道科学会認定医、補聴器適合判定医。小児急性中耳炎及び小児滲出性中耳炎診療ガイドライン作成委員会委員。急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン作成委員会委員。

(取材・文/荒木晶子 イメージカット/iStock)