治療の基本はペニシリン系の抗生剤の処方

 中耳炎になった場合、治療方法は重症度によって異なる、と工藤先生は話します。

 「風邪を引いて鼻がグズグズし出してから3~4日後ぐらいで急性中耳炎になることが多いのですが、そのときすぐに受診して中耳炎が軽い場合には、抗生剤は出しません。そのまま治ってしまう子もたくさんいます。ただし、その3~4日後に必ずもう一度受診してもらい、状態を見ます。その時点で悪化していたら、抗生剤を使うことになります」

●軽症の場合
・基本的には抗生剤の処方はしない
・再診時に悪化している場合は、抗生剤を処方する(その後は医師の指示に従う)

 鼓膜の腫れや赤みがあっても部分的であるなど、重症とまではいえない場合は、まずペニシリン系の抗生剤が処方されます。

 「この場合も、必ず3~4日後に来院してもらいます。その際、良くなっていればそのまま薬を継続しますが、良くなっていなければ鼓膜を切開したり、薬の種類を変えたりします。その後3~4日を目安に再度来院してもらい、経過を見ます。薬をやめるのは確実に良くなってから。およそ10日~2週間ほどかかります

 耳の痛みや熱は、通常2~3日で良くなりますが、鼓膜の状態が正常になるのには3~4週間かかるといいます。「耳の症状が良くなったからといって自己判断で薬をやめたり、通院をやめたりすると、鼓膜の奥にまだ膿がたまっていたりして、ぶり返すこともあります」と、工藤先生は注意を促します。

 ぶり返した場合は、滲出性中耳炎になって聞こえが悪くなることがあります。子ども自身はずっとその状態が続くとそれが普通と思ってしまいますし、親も見た目からは分からないため、気づかないまま時間が経ってしまうことも。

 そうなると、保育園や幼稚園で「呼んでもボーっとしている」となったり、言葉の数が増えない、発音が悪いといった問題も起きてきます

 「良くなったように見えても、医師から『もう大丈夫』と言われるまで、きちんと通院しましょう

●中等症の場合
・ペニシリン系の抗生剤を処方する
・再診時に快方に向かっている場合は、抗生剤を続ける
・再診時に悪化している場合は、切開したり、抗生剤の種類を変える
・確実に良くなって薬の投与が中止になるまで、通院を続ける